• 神戸医薬研究所
      神戸医薬研究所
     独製薬ベーリンガーインゲルハイムの日本法人、日本ベーリンガーインゲルハイム(東京都品川区)は創薬研究の体制を強化する。神戸医薬研究所(兵庫県神戸市)に、メッセンジャーRNA(mRNA)医薬品に使われる薬物送達物質の脂質ナノ粒子(LNP)を用いた注射剤の研究設備を導入したほか、薬理作用や毒性が強い高活性化合物を取り扱う封じ込めレベルの高い研究環境も整えた。日本への投資を強めて先端の科学技術を取り込み、世界展開する新薬の創製を加速する。

     「日本は世界のイノベーションに貢献できる先端の科学技術が備わる国だ」。日本ベーリンガーインゲルハイムのヤンシュテファン・シェルド会長兼社長は日本事業の強化策を進める背景をこう説明する。

     同社は世界開発する新薬を日本に持ち込むとともに、創薬研究と製造の拠点を日本に置く。欧米製薬大手はかつて日本でも創薬研究を行っていたが、現在でも創薬研究を手がけるのは独ベーリンガーのみ。欧米企業が対日投資に慎重になるなかで、独ベーリンガーは創薬研究、製造の両面から強化する。

     創薬研究では神戸医薬研究所を15年ぶりに改修し、創薬研究体制を強化した。神戸医薬研は独ベーリンガーが欧州を中心に世界に持つ創薬拠点のうち、医薬品の有効成分が細胞に取り込まれて代謝される「薬物動態研究」の役割を担う。経口固形製剤の製剤化研究機能も備えており、独ベーリンガーの経口固形製剤タイプの新薬開発案件のうち約4割を神戸医薬研が創製する。

     今回、新たに注射剤の製剤化研究を行う研究施設を2部屋新設した。新型コロナウイルスワクチンで実用化されたmRNA医薬は、薬効成分を体内に届けるために薬物送達物質のLNPなどを用いる。新施設ではLNPと原薬を混ぜて医薬品製剤にする設備などを設置した。LNP技術に精通する日本の研究者とも連携し、創薬研究に生かす。

     ホルモン剤や抗がん剤など微量でも摂取すると人体に強い薬理作用や毒性を与える「高薬理活性物質」を取り扱える研究環境も整備したほか、バイオセーフティーレベル(BSL)の高い試料を扱うクリーンルームも設けた。薬物動態研究で従来、手作業で行っていた実験工程にロボットを導入して自動化し、創薬研究の効率化を追求する。

     製造面では山形工場(山形県東根市)に約100億円を投じて新工場を建設する計画を進めており、2025年の完成を見込む。糖尿病薬などの製剤化能力を強化し、アジアやオセアニア地域への輸出拠点に位置付ける。

     シェルド会長兼社長は「日本へのコミットメントは強い」と創薬研究など科学技術水準が高い日本への投資を強化し、「日本から世界にイノベーションを発信したい」と話す。
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