• 機能性材料
  • 東海カーボン、カー黒に機能付与し新規用途開拓へ
  • 2023年10月10日
    • 黒鉛化カーボンブラックは燃料電池用触媒担体などの用途を開拓する
      黒鉛化カーボンブラックは燃料電池用触媒担体などの用途を開拓する
     <ケミマテ’23>

     東海カーボンがカーボンブラックに機能性を付与した製品で、新規用途の開拓に取り組んでいる。親水性を持つ導電性カーボンブラックはリチウムイオン2次電池(LiB)用の導電助剤、黒鉛化カーボンブラックは燃料電池用の白金触媒担体などの需要を見込み、認知活動や顧客提案を進める。表面処理や黒鉛化処理などの得意技術を生かし、成長が見込まれる2次電池や燃料電池などの分野で新たな収益源をつくる。

     東海カーボンの親水性カーボンブラック「Aqua-Black(アクアブラック)」は、独自の表面処理技術によってカーボンブラックの表面にカルボキシル基を修飾することで親水性を持たせている。水への分散安定性や紙に塗布した際の発色性に優れ、低粘度で、インクジェットプリンター用インクの黒色顔料で多く採用されている。

     通常は水になじみにくい性質のカーボンブラックを水中に分散させる手法として合成樹脂や界面活性剤による表面処理もあるが、アクアブラックは親水性の官能基を修飾することでカーボンブラック自体に親水性を持たせる「自己分散型」と呼ぶ技術を用いる。分散助剤などの添加剤を含まず、インクなどの製品を設計する際の自由度が高められるといった効果もある。

     この自己分散型の技術を使って、導電性カーボンブラックに親水性を持たせた新商品が「アクアブラック204」だ。普通紙に塗布した際に従来品のアクアブラック162に比べ高い黒色が表現できることや、導電ネットワークの形成によって高い導電性が付与できるのが特徴だ。

     高い導電性や分散性が生かせる用途として狙うのが、電気自動車(EV)などに搭載するLiB用の導電助剤といった2次電池部材だ。それ以外にも、現在、導電性カーボンブラックが使われている用途で溶媒を水に置き換えるといった環境対応ニーズも捉えられるとみる。2022年にサンプル提供を始め、顧客提案を進めている段階だ。

     アクアブラックの現在の主用途であるインクジェットプリンターは家庭用に加え、省エネなどの観点でオフィス用途でもレーザープリンターからの切り替えが進んでいることが追い風となる。筆ペンなどの文房具向けの需要拡大にも期待する。既存分野の拡大と新規開拓の両輪で事業拡大を目指す構えだ。

     カーボンブラックを高温の熱で黒鉛化処理した黒鉛化カーボンブラックは高い結晶性や純度、耐熱性、耐薬品性、潤滑性などの特徴を持ち合わせる。粒子径やストラクチャー(構造)の違いで3種類を取り揃え、潤滑剤や導電性を付与する調整剤などの用途で採用実績を持つ。

     高い結晶性などの特徴が生かせる用途として期待するのが、燃料電池車(FCV)や定置型燃料電池のスタックに搭載する触媒担体だ。

     燃料電池は触媒に高価な白金が使われる。黒鉛化カーボンを触媒担体に用いることで白金の凝集を防ぎ、水素を効率よく電気に変換する触媒の効果が高められるとみる。燃料電池を手がけるメーカーなどに対して、黒鉛化カーボンブラックの採用を働きかけていく。
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