PETフィルムに「8400」を塗工したもの(上)と、既存品の比較(ともにUV硬化)
<ケミマテ’23>
ダイセルは、脂環式エポキシ化合物の低誘電グレードを投入する。5G(第5世代通信規格)以降の高周波通信に照準を合わせ、半導体実装などで他材料の電気特性を阻害しないモノマーとして採用を得たい考え。硬化収縮の少なさなどから、ビルドアップ基板の層間絶縁や接着剤用途などを開拓していく。すでにサンプル供給を始めており、大竹工場(広島県大竹市)でのスケールアップ検討を視野に入れる。
脂環式エポキシ化合物「CELLOXIDE(セロキサイド)」シリーズに「8400」のグレードを追加する。同シリーズで低誘電品を投入するのは初めてで、モノマーとしての利用でエポキシ硬化系を低誘電化する。
比誘電率(Dk)は2・78、誘電正接(Df)は0・015(ともに1メガヘルツ)。ガラス転移温度(Tg)は300度Cと耐熱性に優れ、硬化収縮率も小さい点を特徴とする。
主な狙い目となるのが半導体・基板周辺の接着用途だ。半導体パッケージ基板やリジッド基板では、絶縁樹脂として誘電正接の低いビスマレイミド、各種フッ素樹脂などが注目される。だがこれら低誘電樹脂は接着性に乏しい場合も多い。高周波基板は伝送損失を抑えるために配線材料として表面粗さの少ない銅箔を用いる必要があるが、現状では低誘電樹脂との接着性を高めるアンカーコート剤の利用などの工夫がなされている。
セロキサイド8400はこうした接合用途のほか、複数の基板を積み重ねるビルドアップ基板などの積層に際して既存のエポキシ硬化系の改質などに提案。硬化収縮率の低さが半導体パッケージの歩留まり向上につながるとみる。また基板材料に絶縁放熱フィラーなどを多く充填できる利点を合わせて訴求していく。ほかにディスプレイ用途でも有用性が見込めるとみて、早期上市を目指す。
過酢酸に由来した脂環式エポキシ化合物は2000年代に旧ダウが撤退した後、ダイセルが世界唯一のサプライヤーとなった。既存のセロキサイドシリーズはカチオン系の紫外線(UV)硬化コーティング剤向けがボリュームゾーンを占め、接着剤や繊維強化プラスチック(FRP)向けにも展開が進んでいる。同8400などの開発品は、きょう23日からオンライン開催される「ケミカルマテリアルJapan」(化学工業日報社主催)でも紹介する予定。