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  • 日本化学工業、亜酸化銅ペースト事業化
  • 2023年10月24日
    • キュアライトは「ロールtoロール」方式などの大量生産に向く
      キュアライトは「ロールtoロール」方式などの大量生産に向く
     <ケミマテ’23>

     日本化学工業が、電子回路を印刷で作るプリンテッドエレクトロニクス向けに開発中の配線材料「亜酸化銅ペースト」が事業化の段階に入る。光エネルギーを利用して焼結する「光焼結」と呼ぶプロセスで配線が形成できるのが特徴で、無線自動識別(RFID)タグのアンテナ形成などで主流のエッチング手法に比べ、製造工程の環境負荷が減らせる。高温処理が不要なため基材のプラスチックから紙への切り替えニーズも取り込める。RFIDタグなどを手がけるメーカーに売り込み、1~2年後の本格販売を目指す。

     日本化学工業の亜酸化銅ペースト「キュアライト」は導電性フィラーとして酸化物の亜酸化銅を使う。可視光を当てると亜酸化銅が酸素を放出する還元反応が起こって導電性が発現し、銅配線が形成できる。船底塗料の原料などに使われる亜酸化銅の製造ノウハウを生かして開発した。

     一般に亜酸化銅は、1800度Cの高温で還元反応が起こる。日本化学工業は亜酸化銅を平均粒子径100~200マイクロメートルまで微細化することで可視光を吸収して熱に変換する効率が高まり、還元反応が進みやすくなることを見いだした。ペーストにも還元反応を促進させる工夫を施し、光焼成に向く材料に仕上げた。

     キュアライトを使って電子回路を作る際は、スクリーン印刷で配線パターンを形成し、可視光による予備乾燥後にわずか数ミリ秒の光焼成を施したうえで抵抗値を下げ、基材との密着性を高めるプレス加工を経て完成する。一連の工程に要する時間は数分程度で、大量生産にも適する。

     RFIDタグのアンテナ形成で主流のアルミニウムなどをエッチングする手法は工程が長く、廃液や廃水が多く発生する課題がある。光エネルギーのみで配線を形成するキュアライトを用いることで製造工程の環境負荷が低減できるほか、紙やポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムなど耐熱性が低い基材も使える。

     印刷手法で用いる配線材料の銀ペーストはコストが高く、銅ペーストは大気中で酸化が進むため使用可能時間が短く、冷蔵・冷凍保存が必要だ。銀に比べ安価で酸化物のため安定性が高い亜酸化銅を使うキュアライトは、コストや常温保管が可能といった面での利点もある。

     日本化学工業は都内の本社に隣接する研究所でキュアライトを用いて試作が行える体制を整えており、顧客の立ち会いによる試作品作りや、海外顧客からの試作依頼にも応えられる。キュアライトを使った配線の抵抗値は銅ペーストと同等で、ライン・アンド・スペース(配線の幅と配線の間隔)は100マイクロメートル/100マイクロメートルまでの細い配線に対応できるという。

     キュアライトの開発と並行して、スクリーン印刷機などを手がけるマイクロ・テック(千葉県浦安市)と予備乾燥装置「META-FLASH」を共同で開発した。超高輝度のLEDを搭載し、キュアライトを使う配線パターンの予備乾燥が10秒と短時間で行える。マクロ・テックの協力を得て、ロール状に巻いた基材を連続処理する「ロールtoロール」の生産方式にも対応していく。

     調査会社の矢野経済研究所は、RFIDタグと関連機器・システムの世界市場が26年に21年比26%増の1兆5363億円まで拡大すると予測。アパレルや小売りに加え医療や製造、物流分野などでも導入が進むとみる。

     日本化学工業はRFIDタグのほか、電磁波シールド、タッチパネル、各種センサーなどの用途でもキュアライトの持つ特性が生かせるとみる。同社はRFIDタグのアンテナ部にIC(集積回路)チップを接続するのに使う異方導電性接着剤「スマーフ」も手がけており、両製品の一体提案も進めている。環境負荷低減などのニーズを取り込み、キュアライトを新たな収益源に育てる。
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