• 機能性材料
  • 日本化学工業、負熱膨張材で脱炭素に貢献
  • 2023年11月2日
    • セラフィットは熱による体積変化がほぼ直線を示す(左が粗粒タイプ、右が微粒タイプ)
      セラフィットは熱による体積変化がほぼ直線を示す(左が粗粒タイプ、右が微粒タイプ)
     <ケミマテ’23>

     日本化学工業が開発した温めると体積が小さくなる負熱膨張材の本格販売が2023年から始まった。高温から低温までの幅広い温度領域において、熱による体積変化がほぼ直線を描く特徴を持つ。カーボンニュートラル(CN)に対応する熱マネジメント対策として、部材や部品の熱による寸法・位置の変化を抑える用途での引き合いが多いという。採用実績を積み上げ、2年後の25年に年1億円以上の販売を目指す。

     日本化学工業の負熱膨張材「セラフィット」は、リン酸タングステン酸ジルコニウムと呼ぶ複合酸化物だ。温度を1度C変化させた際に寸法が変化する割合を示す「熱膨張係数」はマイナス3ppm/ケルビン(K)。長さ1メートルの材料を100度Cまで上昇させた際に0・3ミリメートル縮む計算になる。

     最大の特徴は幅広い温度領域で熱による体積変化がほぼ一定の値を示すことだ。同社の検証において、800度Cの高温からマイナス85度Cの低温までの熱膨張係数がほぼマイナス3ppm/Kの直線を描くことを確かめている。つまり、温めると縮み、ゼロ度C以下に冷やすと膨らむ特性を持つ材料となる。

     日本化学工業は積層セラミックコンデンサー(MLCC)原料のチタン酸バリウムを手がける。その合成手法を応用し、自社で手がけるリン酸も活用しながら、安定した品質で量産できる技術を確立ずみだ。

     セラフィットは微粒(平均粒子径1・4マイクロメートル)、粗粒(同18・9マイクロメートル)の2種類を取り揃える。樹脂やガラスなど多様な基材に配合可能で、配合量に応じて部材の熱膨張を抑える効果が高まることも確認している。

     需要先として、精密機器・装置、光学・電子用の部材・部品、建材など幅広い用途を見込む。最近では省エネルギー化などに向けた熱マネジメント対策向けの引き合いが多くあるといい、23年からは本格販売が始まった。落合一男執行役員研究開発本部長は「セラフィットの販売を通じ、世の中のCNに貢献していく」と意気込みを語る。
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