• サムスンなど韓国2社の中国工場への装置輸出は無期限で許可された(サムスンの韓国・平澤工場)
      サムスンなど韓国2社の中国工場への装置輸出は無期限で許可された(サムスンの韓国・平澤工場)
     【上海=中村幸岳】中国の半導体市場に回復の兆しがみえ始めた。9月以降、汎用ロジック半導体やDRAMメモリーの工場稼働率が上昇に転じ、7~9月期の半導体輸入額の落ち込みも前の期に比べ縮小した。人工知能(AI)システム向けなどで需要が伸びたのが要因だが、NAND型フラッシュメモリーはいぜん在庫調整が続く。現地の日系材料メーカーは、中国での生産ウエートが大きい韓国勢2社の投資方針や、米国規制の動向も注視している。

     先月30日の中国工業・情報化部発表によると、7~9月期の半導体(集積回路)製造量は前年比2・5%減の2447億個。1~3月期(同14・8%減)、4~6月期(3%減)に比べ減少幅が圧縮された。

     また海関総署(税関当局)統計によると、7~9月期輸入額は前年同期比19・8%減だったが、こちらも前の四半期(同26・7%減)に比べると改善がみられる。

     中国に拠点を置く日系材料メーカーなどによると9月以降、後工程を中心に工場稼働率が上昇し材料需要も回復。前工程では中国ファウンドリー最大手・中芯国際集成電路製造(SMIC、上海)の稼働率が底を打ったもようで、来年の需要本格回復が期待されている。

     中国でも生成AIシステムの開発が盛り上がりをみせるなか、DRAMはGPU(画像処理用半導体)周辺に配置される高性能品・HBM型の需要が拡大。同型で世界トップシェアを握り、中国にも工場を持つ韓国・SKハイニックスなどが販売を伸ばしている。無錫(江蘇省)にある同社のDRAM工場の稼働率も高い。

     中国勢もHBM型の自製化を目指し、長鑫存儲技術(CXMT、合肥市)などが開発に着手したとされる。

     <製造装置の調達急ぐ>

     中国現地メディアは先週、半導体露光(フォトリソグラフィー)装置大手・蘭ASMLの中国トップが10月末に、「汎用線幅半導体の需要は強く、装置の安定供給を継続する」と述べたと報じた。

     中国大手が主力とする半導体の線幅は28ナノメートルや45ナノメートルのいわゆる「レガシーチップ」が主流。その製造装置は米国政府による輸出規制の対象ではないが、9月に高性能GPUの対中輸出禁止が発表されたことなどを受け、さらなる通商ルール厳格化を警戒し装置在庫の積み上げを急いでいる。

     在中国日系材料メーカーにとっては、現地に工場を置く韓国勢2社(サムスン、SKハイニックス)への米国通商規制の影響が焦点となっていたが、米商務省は先月、両社中国工場への最先端半導体装置輸出を無期限で許可すると発表。華東に工場を置くある日系材料メーカーの総経理は「これで両社の高性能半導体の増産投資継続にめどが付き、ひとまず安心した」と話す。

     サムスンの西安(陝西省)NAND型フラッシュメモリー工場と、SKハイニックスの無錫(江蘇省)DRAM工場はそれぞれグループ生産の4~5割を賄っており、増産投資の計画もある。最先端製造装置の輸入が禁止されれば、影響が大きいとみられていた。

     ただ、両社がCHIPS・科学法に基づく米国政府の補助金を受ける場合、中国での投資規模に一定の制約が課されるため懸念は残る。

     <材料も「国潮」色濃く>

     半導体材料市場で「国潮」の波が強まっていることも日系企業の悩みの種だ。中国では半導体メーカーに対し、日系企業が材料を単独供給しているケースが少なくないが、たとえ洗浄剤や高純度ガス、封止材用樹脂などを中国国内で生産していても、顧客が政府方針を考慮し中国企業の調達ソースも確保しようとする動きが増えているという。

     ロジック半導体やDRAMの需要が戻りつつある一方、NANDの工場稼働率は低迷が続く。市場関係者によると今夏、サムスンは西安工場の稼働率を一時20%程度まで引き下げる局面もあった。2週間ほどで元に戻したが、需要回復による措置ではなく、地元政府が高稼働維持を要請したとの見方もある。

     米国による最新鋭装置輸入許可を受け、サムスンは西安工場に最新鋭装置を導入して既存装置と入れ替え、最先端DRAMを増産する方針を固めたようだ。しかし足元、同工場の稼働率は5割程度とみられる。SKハイニックスの大連NAND工場(米インテルから買収、24年末までは同社が運営)の稼働率も低い。

     需要が戻らないなかでも、長江儲存科技(YMTC)など中国NANDメーカーの高性能品開発は続く。YMTCが武漢(湖北省)で新設した工場の稼働率はいぜん低いものの、一部232層のメモリーを出荷しているもよう。大半は128層品だが、中国製の製造装置も使用しているとされる。
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