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  • 化学大手、4~9月期6社が最終減益 石化苦戦も下期は回復か
  • 2023年11月9日
     化学大手7社の2023年4~9月期決算が出揃った。エチレンや塩化ビニル樹脂など汎用化学品、半導体分野の需要低迷が続いており、6社が最終減益だった。一方で電気自動車(EV)を中心に自動車市場が上向き始めたほか、原油・ナフサ価格上昇は石油化学製品の在庫評価益や値上げの効果を見込める。24年3月期の最終利益は3社が据え置き、あるいは上方修正しており、足取りは鈍いものの回復の兆しもみえてきた。

     23年4~9月期最終利益が唯一、増益だった積水化学工業は「高機能プラスチック部門が全体の利益をけん引した」(上脇太代表取締役)。自動車ガラスに用いる中間膜のヘッドアップディスプレイ向けが伸び、航空機に使う炭素繊維複合材も回復した。信越化学工業も自動車向け希土類磁石が堅調で、化学大手の上期実績はモビリティ分野を中心に先端素材が復調傾向にある。

     ただ、化学大手にとって先端素材の利益は一部にとどまり、石油化学・基礎化学品の苦境が重くのしかかる構図が続く。5社の石油化学・基礎化学品の営業利益をみると、黒字に転じた三菱ケミカルグループのMMA、東ソーの石化を除き赤字だった。

     とりわけ汎用品は中国をはじめアジアの需給影響を受けやすい構造的問題として顕在化している。三井化学の中島一代表取締役は決算説明会で「原因は特定できており、大胆な対策を含め構造改革を進める」と話した。三菱ケミカルグループの中平優子最高財務責任者は「MMAの回復基調は強くなく、マージンの戻りも大きくない」と警戒感を緩めない。

     市況に底打ち感のある塩化ビニル樹脂も「一進一退がしばらく続く」(信越化学の斉藤恭彦社長)。同社の米塩ビ子会社の23年7~9月期の経常利益は前四半期比で改善し、北米の住宅向けも安定するが需要に強さがない。東ソーのクロル・アルカリ事業の24年3月期下期の営業利益が大幅に改善するのは定期修繕がなくなる反動で、「中国経済の低迷が続くと厳しい」(経営管理室長の坂田昌繁執行役員)。

     24年3月期通期最終利益は信越化学、積水化学が従来予想を据え置き、医薬カプセル子会社の売却益などの影響を踏まえて三菱ケミカルGは上方修正した。残りの4社はいずれも下方修正した。三井化学は石化部門の通期コア営業損益を従来予想の100億円の黒字から30億円の赤字に引き下げた。

     一方で80%程度の低稼動にとどまるエチレン設備は「足元では改善に向かっている」(旭化成の堀江俊保代表取締役)との見方も出てきた。石化部門が下期に赤字となるのはサウジアラビアの石油化学事業の低迷の影響を受けている住友化学のみで、残り4社は黒字を確保する。三菱ケミG・旭化成、東ソー、三井は上期にあったエチレン設備のトラブルによる停止影響なども縮小する。

     足取りは重いものの石化分野に回復の兆しがみえるなか、半導体はコロナ禍の巣ごもり特需の反動減が長引く様相。信越化学の轟正彦取締役専務執行役員は半導体ウエハーの見通しについて「24年前半はそう大きな回復にならない」と分析する。半導体の在庫調整が解消すれば多方面の消費財の需要が上向き、復調の芽を時期を逸することなく取り込む経営力が各社の業績を左右しそうだ。
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