• 建設が進むTSMC熊本工場。台湾では早くも第4工場まで拡張するとの報道が出ている
      建設が進むTSMC熊本工場。台湾では早くも第4工場まで拡張するとの報道が出ている
     熊本県が半導体サプライチェーンの県内構築を目指している。TSMCの進出決定以降、半導体関連企業33社が熊本への投資を決めたが、主に半導体チップを作る前工程。そこで実装からパッケージ加工まで行う後工程企業を誘致してサプライチェーンを完成させようと、補助金も最大50億円に引き上げた。2030年頃には「世界に先駆けた3次元実装産業の集積地」にする狙いだ。「新生シリコンアイランド九州」の中核として、半導体関連産業の集積をさらに進める。

     TSMCの子会社でソニーセミコンダクタソリューションズやデンソーも出資するジャパン・アドバンスト・セミコンダクター・マニュファクチャリング(JASM)が運営するTSMC熊本工場は21年、政府の半導体強化施策の一環として熊本に立地することが決まった。熊本県として誘致したわけではないが、県半導体立地支援室はTSMC進出の理由を、「大手ユーザーであるソニーセミコンダクタマニュファクチャリングがあり、水資源が豊富で工業用地も余地があった」と話す。そしてソニーが進出したのは細川護熙知事時代に整備した臨空工業団地「テクノパーク」の成果とみている。

     TSMC熊本工場はソニーセミコンダクタマニュファクチャリングのほぼ隣に位置し、ソニーが車載用にも注力するCMOSイメージセンサー(CIS)向けのロジック半導体などを量産する。このCISはデンソーが先進運転支援装置(ADAS)などに組み込むものだ。来年末には1700人体制で月産5万5000枚(300ミリメートルウエハー換算)能力で稼働予定である。

     稼働にタイミングを合わせて東京応化工業、クラボウ、荏原製作所、カンケンテクノ、JCU、東京エレクトロン、三菱電機、ジャパンマテリアル、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ、大陽日酸など33社(9月末時点)が進出を決めている。10月にはフェローテックも加わるなど、進出ペースは今後も落ちないとみられる。

     それだけに工業用地の不足が指摘されているが、県では24~27年度にかけて県内各地に約150ヘクタールを整備する計画である。また大量の地下水をくみ上げることに募る住民の不安に対して、新たに進出する企業は汲み上げたのと同じ水量を戻すように義務化した。安定した電力も重要なインフラだが、太陽光発電量も多いことから供給には「不安はない」としている。

     半導体関連産業の生産額を32年度に19年度比2・3倍の1兆9315億円にする目標を達成するため、残る課題は後工程基盤の構築である。前工程に加えて実装を担う企業も誘致しようと200億円以上の新設投資を行う企業に対して最大50億円の補助金制度を新たに設けた。前工程に比べて軽視されやすい後工程だが、TSMCは台湾で最先端デバイス向けに3次元パッケージ「CoWoS」(チップ・オン・ウエハー・オン・サブストレート)への積極的な投資を行っている。ゆくゆくは熊本でも高密度パッケージの需要が必要になるとみられる。

     深刻なのは半導体人材の確保で、「現状のままでは毎年1000人不足する」とされる。熊本に限らず九州全域で共通する課題である。県ではテクノパーク内にある県立技術短大の半導体学科の卒業生を熊本大学の2年に編入できる制度を24年度から施行する。また通勤圏をより広めようと県南部への交通アクセス網の拡充も進めているところだ。
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