• 資源循環
  • 欧州、環状シロキサン規制議論 PoPs条約対象に
  • 2023年11月21日
     シリコーン樹脂製造に不可欠な中間原料である環状シロキサンの一部を、残留性有機汚染物質規制に関する国際条約である「PoPs条約」の対象にする議論が欧州で立ち上がり、市場関係者に動揺が広がっている。北米、日本、豪州ではメーカー団体によるリスク評価を終え、需要家側でも先端産業分野から日用品にいたる幅広い用途で、耐久性能などの付加価値を支える物質として代替は困難との共通見解がある。欧州で同条約の対象物質とする条件を満たすか議論されている段階だが、今夏に欧州化学物質庁(ECHA)が公開した報告書に対しては、100件を超えるパブリックコメントが集まり、世界中のシリコーンサプライチェーンが議論の行方を注視している。

     PoPs条約は残留性有機汚染物質の製造や使用の廃絶・制限、排出削減、適正処理などを規定する。(1)難分解性(2)蓄積性(3)毒性(4)長距離移動-の可能性を持つ物質が対象で、登録されると製造・使用、輸出入の「原則禁止」(附属書A)、「特定の用途、目的に制限」(附属書B)、「非意図的に生成される物質の排出の削減及び廃絶」(附属書C)-のいずれかで規制される。184カ国の批准国は各国内諸法令に基づき規制を実施する。日本は化審法に基づいて審議される。

     発端は6月に開かれた欧州委員会専門家グループ会議だ。環境総局がオクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)をPoPs条約附属書Bの候補物質として提案する方針を表明した。影響を及ぼす用途が広範囲に及ぶこともあり、ECHAが同会議に提出された報告書を公開。D5、D6に毒性があるとする内容など、PoPs条件を満たすかの議論につなげるべく8月上旬までパブコメを募集し、シリコーン工業会(SIAJ)によると世界中の団体、個人から114件の意見が提出された。

     半導体デバイス、車載電装部品の放熱材料、再エネインフラや航空機分野における耐久シール材、医療機器コーティング材料や化粧品原料、繊維処理まで用途が広範なシリコーン樹脂にとって候補となった環状シロキサンは使用量の98%がポリマー製造に使われる不可欠な中間原料。欧州での議論に限定されている現状とはいえ、SIAJは「モノマーとして生産できなくなれば現在の技術ではシリコーン製品が生産できなくなる」と懸念する。カナダ、日本、豪州、米国は有害性などリスク評価を実施ずみ。各物質で使用制限を設けないという結論に達しており、戸惑いが大きい。

     さらに、パブコメには日本、北米の化粧品業界団体や建材関連団体のほか、欧州域内からも学術機関や需要家業界団体が産業・製品における不可欠性を強調する声が上がっている。欧州における化学物質規制のREACHではD5、D6に毒性を認めていないほか、D4を含めたこれらの物質への規制はシャンプーや洗剤などウォッシュ・オフ化粧品向けに使う使用量2%以下の直接利用用途のみで、ポリマー製造用途は制限対象外だ。PoPs条約を利用してD4~6に対する規制を世界基準にしたいECHAの意図が見え隠れするが、ポリマー製造用途にまで及ぶと大きな影響を欧州自身も被ることになる。

     今後の議論は欧州専門家会議の後、最速で来年の「残留性有機汚染物質検討委員会」(PoPRC)で規制対象物質について検討・評価が行われ、対象物質にノミネートされるかが焦点となる。SIAJのほか、グローバル・シリコーンズ・カウンシル、シリコーンズ・ヨーロッパといった世界のメーカー団体が規制の適用を不適切とする立場を明確に示している。
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