• 完成した熊本第1工場。年内に量産を始める。第2工場も近く着工予定だ
      完成した熊本第1工場。年内に量産を始める。第2工場も近く着工予定だ
     日本の半導体産業が新たな幕開けを迎える。台湾積体電路製造(TSMC)熊本第1工場が動き出すことで関連する部材や装置産業がシリコンアイランド九州に再び集積し、中長期的に日本のデジタル化に貢献することになった。TSMCは第2工場も近く着工予定だ。経済産業省は材料の現地調達率を50%以上にする認定基準を示したこともあって、半導体関連投資は加速する一方だが、熊本では水資源の保全という課題も浮き彫りになっている。年内に量産を始める第1工場、米工場の建設が遅れているTSMCにとっても新たなグローバル戦略の幕開けといえる。

     TSMC第1工場(熊本県菊陽町)の開所式が24日、現地で盛大に行われた。この工場の重要性は同社の創業者である張忠謀氏が来日したことにも表れている。同氏は、「半導体受託生産事業を立ち上げるうえでソニー創業者である盛田昭夫氏との面談が大きかった」と、日本とのかかわりの深さを語った。

     熊本第1工場は2022年4月の着工、昨年末に完成した。敷地面積は21・3ヘクタール。クリーンルーム面積は4万5000平方メートル。同日、経産省は第2工場へ最大7320億円の助成を行うと発表したが、具体的な建設地は公表しない。第2工場では6~12ナノメートルと自動車向けの40ナノメートル製品を27年末には出荷する予定。両工場を合わせると6~40ナノメートルプロセスまでの製品を月10万枚(口径300ミリメートルウエハー換算)生産することになる。

    • 日本との深いつながりを力強く話すTSMCの張氏
      日本との深いつながりを力強く話すTSMCの張氏
     熊本工場の特徴は幅広いプロセス製品を主に自動車関連向けに量産することだ。トヨタ自動車が運営会社のジャパンアドバンストセミコンダクターマニュファクチャリング(JASM)に新規出資したことでも期待の大きさがわかる。

     一方で表面化しているのが水資源の保全問題。TSMCの劉徳音会長は、「再生可能エネルギーを100%使うことを誓う」、斎藤健経産大臣は「台湾で培ったノウハウを日本で生かして使用するよりも多い地下水を節約するようにする」と、強調した。台湾では渇水と停電対策に追われるTSMCにとって熊本の良質で豊富な地下水と安定した電力供給は進出理由のひとつ。それだけにESG(環境、社会、企業統治)には敏感だ。地元の水問題に対する懸念に対して一部を除いて当日の報道機関の施設内覧を急遽中止し、代わって県知事ほか地元自治体幹部の水処理施設などの視察に充てた。

     第1工場は1日当たり8500トンの地下水を使うが、同量の地下水の涵養に努めるという。日本で初めて現像工程に使う毒性のあるTMAH(テトラ・メチル・アンモニウム・ハイドロオキサイド)廃液を工場内で処理し、資源として再利用を図るなど、先進性も訴求する。

     これと併せて注目されるのが部材調達率で、経産省は第2工場への助成に当たって「シリコンウエハーを主に日本のサプライヤーから調達する」「材料も地元のサプライチェーンから50%以上購入することを追求する」という基準を示した。「ガスや化学品などもできる限り日本で調達するように努めて欲しい、約束してもらうことがいちばん日本経済に有効であろう」としている。

     これまでTSMCの工場が集結する台湾に日系企業が集結してサプライチェーンを構築していたが、今度は先端部材のサプライチェーンが構築される熊本にTSMCが進出したことになる。TSMCはつくば市で先端パッケージの研究開発を行うが、生産拠点も国内に設ける可能性がある。
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