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  • 武田、R&D費後期品に軸足 大型薬候補に賭ける
  • 2024年3月4日
     武田薬品工業は、研究開発(R&D)投資の軸足を後期開発段階の新薬候補品(パイプライン)に移す。これまでは将来の成長を支える新薬創出に注力し、初期~中期段階のパイプラインに重点的に振り向けてきた。その成果から年間売上高10億ドル以上を見込める大型品候補が2024年度は6つに拡充する見込みで、今後2年間はR&D費の70%超を後期開発品に充てる戦略に切り替える。業績成長が踊り場を迎えるなか、大型品を含めた新薬をテコに新たな成長ステージを目指す。

     アンドリュー・プランプ取締役リサーチ&デベロップメント・プレジデントが化学工業日報の取材に応じ、「過去数年はR&D費の60~70%を初期~中期段階の開発品に投じてきたが、24年、25年は逆に70%以上を後期開発品に割り振る」と研究開発方針を明らかにした。「(年間売上高10億ドル超の)ブロックバスター候補の可能性を秘めた後期開発品が6品目ある」と新薬候補パイプラインが充実しており、実用化に向けた臨床開発のギアを上げる。

     武田薬品は、主力の潰瘍性大腸炎・クローン病治療薬「エンティビオ」が伸びているが、米国や日本の大型薬の独占販売期間が満了を迎えることや新型コロナウイルスワクチンの減少などから、24年3月期通期の業績は、売上収益が前期比1・2%減の3兆9800億円、営業利益は54・1%減の2250億円と減収減益となる見通し。

     エンティビオは年間売上高7000億円程度まで育ち、後発品参入が予想される30~32年頃まで牽引が期待されるが、業績の拡大基調への回帰と持続的成長のために新薬の実用化がカギを握る。プランプ氏は「進捗している後期開発プログラムに重点を置く戦略にシフトする」と話し、経営資源を配分して大型新薬候補の製品化、育成に力を注ぐ。

     「最も優先順位の高い開発品の1つが乾癬性関節炎などの治療薬候補『TAK-279』」(同)。乾癬性関節炎は、関節の疼痛、こわばりなどを生じさせる炎症をきたす疾患で、全世界の患者数は約1000万人とされる。同開発品はほかにも複数の免疫介在性疾患を対象に大型化が見込める。

     睡眠障害の1つであるナルコレプシーの新薬候補TAK-861も「重要な後期開発ポートフォリオの最前線に位置している」。国際共同臨床第3相試験を24年前半に開始する予定。ナルコレプシーはアンメットメディカルニーズ(満たされない医療ニーズ)が高く、実用化されれば年間売上高数十億ドル規模の大型薬になるとみられる。

     そのほか、免疫性血小板減少性紫斑病などを対象に開発中のTAK-079が24年度第3相臨床試験(P3)に移行する見込みなど進展している。

     10年代後半以降、武田薬品はR&D費を従来から倍増し、開発パイプラインを強化してきた。オンコロジー(がん)や消化器系疾患などを重点分野に位置づけ、モダリティ(治療)の多様化にも注力。「低分子医薬品の企業で開発パイプラインは競争力が十分でなかった」が、大型化が期待できる後期開発品が増え、細胞・遺伝子治療などモダリティの幅が広がっている。

     製薬企業の新薬開発は常に失敗のリスクが横たわる。武田薬品も23年7~9月期に肺がん治療薬候補などで想定した治験結果が得られず、1000億円超の減損損失を計上した。選択と集中を推進しながら継続的なR&Dの強化で新薬を創出し持続的成長の実現を目指す。
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