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  • 出光興産、化学品の原料転換に軸足 京葉地区、誘導品は堅持
  • 2024年5月24日
    • 千葉事業所では隣接する三井化学と連携し基礎化学品の競争力強化を目指す
      千葉事業所では隣接する三井化学と連携し基礎化学品の競争力強化を目指す
     出光興産は、基礎化学品事業の構造改革を進めながら、グリーンケミカル製品の供給網構築を目指す。京葉地区で三井化学とエチレン装置を集約する検討を進める一方、宮岸信宏基礎化学品部長は「千葉での基礎化学品をやめるつもりはない」と強調する。2社共同で石化原料を製造し、各種の誘導品事業を継続する方針。ただし、出光としては原料供給の役割により力を入れ、中長期的にはバイオ原料の投入などで存在感を維持していきたい考え。

     出光興産は近年、化学品に関し不採算事業の整理を進めてきた。軟質ポリオレフィン「エルモーデュ」やアクリル酸の生産から撤退したほか、ビスフェノールAの製造停止を決めている。2010年から有限責任事業組合(LLP)でエチレン装置を共同運営してきた三井化学と、27年度をめどに同装置を集約し、さらに抜本的な収益力の改善を推し進める。

     千葉の自社エチレン設備は、「京葉域内の需要に対して生産能力に余剰があり、生産物を国内の他の地域にも転送している状況だ」(宮岸部長)。域内の他社設備も同様とみられるが、三井側ではなく出光側の設備を止める方向で検討している要因として、下流の誘導品のバランスや競争力が「一つのポイントになっている」。

     集約後は、1基のエチレン設備を2社で共同運営することになる。運営方式や能力の割り当て方なども今後の検討事項とする。誘導品のバランスや技術上の課題など多数の検討が必要で、最終的な意思決定に踏み切るのは25年度以降になりそうだ。グループ製油所の流動接触分解(FCC)装置から供給できるプロピレンなども合わせ、現時点で「留分が不足するとは懸念していない」。

     宮岸部長は、「ナフサクラッカー以降を本業とする化学メーカーに対し、当社の強みは原料供給ができることであり、原料により力を入れていく」と語る。今後、プラスチックのケミカルリサイクルによる生成油や持続可能な航空燃料(SAF)の副生ナフサといった新たな原料も確保できる見込みで、「集約したクラッカーに投入することで、誘導品のグリーン化につなげたい」考え。将来的には、バイオエチレンの製造など、新規のグリーンケミカル供給網も構想する。

     千葉と並ぶもう一つの石化拠点である徳山事業所では、「留分の供給が域内でほぼ完結しており、クラッカーに競争力がある」。域内唯一のエチレン装置として今後も不可欠とみて、アンモニアへの燃料転換を狙いながら存続させていく方針だ。28年に稼働予定のSAF設備で副生する年数万キロリットル規模のバイオナフサの利用も検討する。

     足元では、化学品の稼ぎ頭としてアロマ(芳香族化合物)に期待を寄せる。世界的にガソリン需要が堅調ななか、ガソリン基材に使われるアロマの需要も高まっており、原料が競合するパラキシレン(PX)はとくに良好な事業環境が続きそうだ。ただし、事業規模では中国や中東といった海外勢が有利であり、グリーン化で差別化を狙う。スチレンモノマー、ポリスチレンも、「引き続き重要なチェーン」として、他社と連携しながらグリーン化を図る方針。
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