環境省は、気候変動対策などを参考に、化学物質管理についても経営上のインセンティブにつながるルールを検討する。最近は二酸化炭素(CO2)削減量やリサイクル率といった環境関連情報を企業に開示させ、ESG投資を促す動きが盛んだ。欧州では、この考えが化学物質にも及んでおり、大企業を対象とする「欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)」に化学物質の扱いを評価する仕組みが導入された。懸念物質の取扱量などを報告させる一方、代替物質などの研究開発投資は好意的に評価する。化学業界はインセンティブの一環として化審法における名称公示制度の見直しを求めており、法の見直し時期に合わせ、何らかの新ルールが導入される可能性がある。
<低リスク開発後押し>
きょう10日に開催される経済産業省と環境省による有識者会議で、公表する報告書骨子案の中に、インセンティブに関する論点を盛り込む。有識者会議は、化審法の前回改正から約5年を経て、法改正を視野に入れつつ化学物質管理全般を話し合うため昨秋に発足。2回の会合を行った。
プラスチック汚染やPFAS問題を背景に「持続可能な化学物質管理」が国際会議の主要な議題になってきた。日本では化審法や化管法による規制ルールは存在するが、インセンティブに関するルールは手薄。具体的な方法は固まっていないが、リスクの低い化学品開発を財政的に後押しする仕組みなどについて、有識者から意見を募る。
<名称公示制度見直し>
日本化学工業協会など業界側が要求しているのが、名称保護期間の延長だ。新規化学物質を開発した場合、化審法によれば5年後に名称を公示する必要がある。見方を変えれば5年間しか営業秘密を保持できない。一方、米国のTSCAや欧州REACHでは10年間にわたり保護される。
公示制度は二重届出の防止が目的だが、例えば新規化学物質のリスクに応じて期間を変えたり、公示方法を工夫したりして、手続きの安定性と企業秘密を両立させる意見も提案されている。
有識者会議は化審法だけを議論しているわけではないが、制定から50年が経過した同法の古さはしばしば指摘される。例えば化審法では「非意図的に製造される成分」が1%を超える場合は同定しなければならず、添加物が多く含まれるプラスチックのケミカルリサイクルを阻んでいる。「50年前の考え方で循環経済など現代の課題に対応できるのか」といった問題が今後ますます焦点になりそうだ。