• 資源循環 連載
  • 製紙-化学連携への道 大手がバイオ化学進出、垂直分業構築がカギ
  • 2025年7月10日
  •  <製紙-化学連携への道/上>

     製紙大手が、いよいよバイオ化学品市場への進出を始める。本業がシュリンクするなかで整えてきた化学関連の技術基盤がまとまり始め、多様な誘導品開発をともなう「木質化学」として立ち現れつつある。一部には先端半導体などハイエンドな出口戦略をみずから築く動きもあるが、化学業界とのサプライチェーン連携が必要なのは間違いない。木質・非可食由来を軸とした製紙-化学の垂直専門分業が実現できるかどうかが問われている。

     製紙各社は、生産余剰が生じるパルプ(セルロース)や副生物であるリグニン・ヘミセルロースの「丸ごと利用」を発想の根底に置く。バイオ化学への進出は装置産業としての生き残り策と言え、蒸解釜など川上に当たる大量生産設備を生かし切るのが狙いだ。パルプの大量転用では2000年代から第2世代バイオエタノールが研究された一方、スペシャリティ用途ではセルロースナノファイバー(CNF)がそれ以前から注目されてきた。

     <業態転換に現実味>

     これらはかねてNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)プロジェクトなどを通じた個別テーマとして開発されたが、直近で大きな変化点となったのは23年にスタートした「バイオものづくり革命推進事業」だ。王子ホールディングス(HD)・日本製紙・大王製紙の大手3社が揃い踏みし、いずれも持続可能な航空燃料(SAF)向けなどを狙うセルロース系の第2世代バイオエタノールを開発。さらに化学品生産をセットで構想した網羅性が新味と言える。

     個社ごとの濃淡はあるが、この動きはコロナ禍を経てポートフォリオ転換に本腰を入れ始めた製紙業界の現状と符合する。バイオマス特有の高コストといった課題はいぜん残るものの、各社が創出するバイオ化学品は「じっくりインキュベートしていく新規事業」という範疇を超える可能性がありそうだ。

     <川上の糖液を供給>

     大手3社のバイオエタノール・化学品の実証生産設備は、20年代後半に相次いでスケールアップされる。先鞭をつけたのは王子HDで、今年5月に米子工場(鳥取県米子市)でバイオエタノールと木質由来糖液の大型パイロット設備を竣工させた。

     同社は09年からNEDOプロのもとでエタノールの生産実証に取り組んだ経験があるが、呉工場(広島県呉市)の生産設備はプロジェクト終了とともに撤去。そのため今回のパイロット建設では地元自治体からの支援獲得を選び、NEDOプロの開発対象以外にも適用できる恒久設備として建設した。

     同社の特徴は、バイオエタノールよりも一歩川上に当たる糖液の外販事業を前面に打ち出した点にある。かねてブタンジオールやイソソルバイド向けの供給などを幅広く想定し、パイロット建設前から進めたサンプルワークで化学品向けに多くの引き合いを得た。さらに自前開発でも、乳酸発酵で得るポリ乳酸(PLA)の出発原料として糖液を使う。

     今回のNEDOプロで対象とする開発領域には、この間口をさらに広げるものがある。王子HDで研究開発を統括する奥谷岳人執行役員によれば、「参画メンバーであるバッカス・バイオイノベーションの提供する乳酸発酵向け以外の菌体も広く使いこなす」意向。米子のパイロット設備は多様な糖化・発酵プロセスを実装する大型実験場となる見通しだ。
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