•  日本の製油所が海外市場の獲得に向けた動きを強めている。ENEOSは2025年度からの中期経営計画で海外燃料油事業の拡大を掲げ、出光興産も昨年11月、富士石油を連結子会社化し、同社の大型桟橋を輸出拠点として活用する体制を整えた。欧米で製油所閉鎖が相次ぎ国際需給が引き締まる一方、環太平洋ではなお供給の隙間が残る。輸出前提の大型製油所を抱える韓国勢に比べ規模面の制約はあるものの、市況変化を捉える感度と機動的な出荷体制の構築が、日本勢の輸出市場開拓の鍵となりそうだ。

     背景にあるのは、製油所稼働率の改善。近年、老朽化にともなう計画外停止などで停滞していた稼働は、デジタル技術を活用した予備保全の推進などにより持ち直しつつある。ENEOSは27年度までに定修影響を除いた製油所稼働率90%を目指しており、25年10月時点で82%に達した。出光興産でも稼働率は改善しており、25年度第2四半期(7~9月)は83%だった。

     両社ともさらなる改善に自信を示している。資源現物取引の調査会社で海事データ分析を手がけるケプラーによると、12月のガソリン輸出は過去最高水準となり、日本の輸出能力の拡大をうかがわせた。

     燃料油の国内需要は中長期的に減少が見込まれるものの、製油所の数をさらに減らせば、安定供給体制を損なうリスクが高まる。輸出マーケットの拡大は、新たな収益源となるだけでなく、国内の安定供給体制を下支えする意味合いも持つ。

     市場環境は当面、追い風が続く見通しだ。ケプラーによると、25年には欧州や北米で日量約90万バレルの精製能力が恒久的に閉鎖され、需給が引き締まった結果、年間を通じて石油製品マージンは高水準を維持した。2026年にはインドや中東を中心に日量約100万バレルの精製能力増設が見込まれるが、石油製品輸入の依存が高まる欧州向けで吸収されるとみられる。日本の製油所が主戦場とする環太平洋市場に、製品が大量に流れ込む構図にはなっていない。

     さらに、米国西海岸で進む製油所閉鎖も、日本からの輸出機会を広げる要因となる。昨年に続き、今年も1カ所の製油所が閉鎖される予定だ。米西海岸は全米で最も環境規制が厳しく、脱炭素政策とも相まって、製油所の新設は事実上困難な状況にある。

     もっとも、環太平洋市場で輸出余力を持つのは日本勢だけではない。輸出前提で設計された大型・高度化製油所を抱える韓国勢に対し、日本の製油所は国内需要を前提とした中小規模設備が中心で、正面からの競争で優位に立つのは容易ではない。

     ただ、ケプラーの鳥潟ゆういシニアマーケットアナリストは「市況の変化に応じて機敏に動き、需給の隙間を捉えることで、オポチュニスティックな取引を拾っていく余地は十分にある」と指摘する。実際、日本全体としては不足しているジェット燃料でさえ、機会を捉えて米西海岸に出荷した実績があり、その能力があることの証左だという。日本の製油所が海外市場を広げていくには、市況の知見を深め、適時出荷できる体制の充実が求められているといえそうだ。
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