【上海=中村幸岳】中国政府による軍民両用品目の対日輸出管理強化にともない、製品によって中国企業が輸出を控えたり、輸出審査が長期化することなどが懸念されている。企業関係者によると1月下旬現在、リスト掲載品の既存契約分輸出は平常通り行われる一方、レアアースの新規契約が先送りされる事例があるようだ。管理強化には政治的な狙いがあり対応は難しいが、北京安理法律事務所の陳子源弁護士(パートナー)は「両用品の禁輸対象となる『輸出管理制御リスト』への企業名掲載を避けることがまずは重要」と説く。
対日輸出管理強化の発表(6日)直前となる昨年12月31日、中国商務部は「両用品目輸出管理リスト」を更新。ガリウムやアンチモン、炭素繊維などを新たに収載し、管理対象品は1000を超えた。これにより中国は両用品について、「輸出管理法」(2020年施行)、「両用品目輸出管理条例」(24年施行)、そして同リストの3層からなる輸出管理体制を確立した(図参照)。
リスト掲載品で最も注目されるのはモーター用永久磁石などに使われるレアアース。日本は10年頃、その9割を中国から輸入していたが、現状7割に低下している。世界的には「レアアース脱中国依存の先進国」とされるが、依存度はなお高い。
中国でレアアースを含む両用品を輸出する企業は、まず市の商務局に用途や販売先企業を申請。その後、中央商務部による審査を経て輸出可否が最終決定される。審査期間は申請受理から45日以内が原則だが、例外的に「専門家審査」に入ると期間は無期限となる。日系企業の関係者によると用途が民生でも、販売先企業のグループ会社に軍需関連企業がある場合などに輸出許可が下りないケースがある。
掲載品以外も注視が必要だ。中国の関係者によると、中国の一部プリント基板(PCB)メーカーに対日出荷を停止する動きがある。原料に、リスト掲載品である高機能樹脂・セラミックが使用されていることが理由。ただ足元、現地でPCBを調達したり、PCB用材料を供給する日系企業に目立った影響はないもよう。
両用品輸出の管理強化対象となるのは日本が最初ではない。中国は両用品目輸出管理条例施行直後の24年12月、米国に対し初めて管理強化を発動。民生用途であってもガリウム、ゲルマニウム、アンチモンなどの対米輸出を原則禁じた。続いて昨年4月には、永久磁石や軍需用途に使われるサマリウム、ジスプロシウム、ルテチウムなどレアアース7品目の対米輸出規制も厳格化した。
中国当局の日米両国に対する措置を比較すると異なる点がある。例えば対米では、事実上の禁輸対象となる企業を列挙した「輸出管理制御リスト」と、輸出審査が通常より厳格になる「信頼できないエンティティリスト」が存在する。前者には計82の、後者には計60の米国企業・組織がそれぞれ掲載されている。
現状、日本企業を対象とする禁輸リストは存在しない。しかし両国関係の推移次第で発表できるよう準備されているとの見方もある。
輸出管理強化に関する当局の裁量の幅が大きいため、企業の対応にも限界があるが、陳弁護士は、輸出管理制御リストへの掲載を避けるためにも「日系企業は貿易ルールだけでなく、背後にある国際政治のロジックと中国政府の思惑を見極め、トラブルを回避する必要がある。また、日本以外の輸出先開拓も重要だ」と指摘する。
今後、両用品の輸出に際しては審査期間の長期化や必要申請書類の増加など手続き煩雑化が予想される。これを嫌って日系企業、中国企業とも関連ビジネスを縮小もしくは停止するといったことも懸念される。