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  • 中国石化市況、原油高受け上昇も実需に弱さ スプレッド拡がらず
  • 2023年9月21日
    • 合成樹脂を中心に全体的な荷動きはまだ鈍く誘導品実需が戻る気配を見いだしにくい
      合成樹脂を中心に全体的な荷動きはまだ鈍く誘導品実需が戻る気配を見いだしにくい
     【上海=中村幸岳】中国で7月以降、石化基礎原料や樹脂原料を中心に化学品市況が反転上昇している。要因として原油・ナフサの値上がりや、底値とみた投機筋の買いが入ったことが挙げられる。しかし川下の合成樹脂を中心に全体的な荷動きはまだ鈍く、9月半ば時点でオレフィン、合繊原料チェーンのスプレッド改善に至っていない。ただ流通在庫解消が進んでいることは確かで、国慶節商戦を控え実需回復の行方が注目される。

     華東地域のエチレン価格は9月半ば現在、1トン当たり6600~6700元(約900米ドル)で推移。直近底値の6月に比べ5~10%高い。誘導品ポリエチレン(HDPE)の市況も1トン8500元を超える展開で、同5%程度上昇した。

     中国では今上期、ポリエステルチェーン製品の需要が2ケタ伸び、景気停滞下で底堅い成長を記録した。ただ在上海日系商社筋によると市況は製品ごとにばらつきがある。

     例えばパラキシレンの華東地域価格は足元1トン9000元を挟んで推移。6月比10%を超える値上がりとなっている。一方、モノエチレングリコール(MEG)の上値は重い。原料エチレンの価格上昇と、石炭由来品増産にともなう余剰感が重なり、MEGのメーカースプレッドはマイナスになるケースがあるという。

     高純度テレフタル酸(PTA)のスプレッドも数十米ドルと薄く、また中国では例年ポリエステルの荷動きが下期に入ると鈍るため、先行きは不透明だ。

     市場が懸念するのは、合成樹脂の荷動きの弱さ。中国の1~8月住宅新築面積は前年同期比24%減となり、輸出額は8月まで4カ月連続で減少するなど、誘導品実需が戻る気配を見いだしにくい。

     別の商社筋によると7月以降、ポリオレフィンや塩化ビニル樹脂など汎用樹脂の市況は上昇しているものの「受注は劇的には増えず、市中在庫がある程度落ち着いてきた程度の感覚」。芳香族やフェノール、アセトンなどの価格が上昇する一方、アクリル樹脂、ナイロン、ポリカーボネートなどの市況上昇は力強さを欠く。

     東南アジアの化学品市況も中国と同様の傾向がみられる。メタノールやアンモニア、芳香族のスプレッドが回復する一方、合成樹脂を含むその他化学品のマージン改善は進まず「原油価格の上昇分が乗っただけ」(在シンガポール商社)。基礎化学品の値上がりを受け、合成樹脂マージンはむしろ悪化傾向にあるという。

     10月上旬の国慶節休暇明け以降、川下需要の回復が期待されるところだが、アジア域内では「中国の増産投資を受け、石油化学品のほとんどが構造的な供給過剰の状態」(同)。メーカー、トレーダーとも年内のスプレッド改善や実需回復は限定的との見方が強い。
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