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  • トクヤマ、窒化ホウ素を放熱材料用途で本格供給
  • 2023年9月29日
    • 粒子の凝集により厚みを持たせて熱伝導率を高めた大粒径凝集タイプ
      粒子の凝集により厚みを持たせて熱伝導率を高めた大粒径凝集タイプ
     <ケミマテ’23>

     トクヤマは放熱フィラー用途を中心とする窒化ホウ素(BN)事業の拡大を本格化させる。絶縁用肉厚単粒子タイプ、熱伝導性を高める大粒径凝集タイプの市場開発が進み、金属ベースのパワー半導体向け絶縁回路基板用で、2024年には製品化できる見込み。放熱向け以外の品揃え強化や量産投資の検討で28年度にBN事業で売上高20億円にする。同時に窒化物放熱フィラー事業を同年度に35億円規模にする考えでBNを主力にする。窒化物による放熱材料の拡充で需要成長を全方位で捕らえる。

     放熱材料は電子材料事業で力を注ぐ分野の一つ。世界トップシェアの窒化アルミニウム(AlN)粉末・顆粒に続き、窒化物で差別化を図る狙いで、セラミックス基板用では窒化ケイ素の開発が進展。BNでは、粉末フィラーとして供給する放熱用BNの開発ステージが進む。金属ベース回路基板向けやシート厚の薄い樹脂基板用で各グレードをすでに有償提供しており、来年には本格的な供給を始める。

     BNは最大200ワット/メートルケルビン(W/mK)の熱伝導率を示し、電気絶縁性が高い。比重が放熱フィラーの酸化アルミニウム(アルミナ)の半分程度で軽量化に貢献できる。誘電率が低い特徴もあり、放熱基板用放熱フィラーとして優れた特性を持つ半面、粒子が鱗片状のためにアルミナを大きく上回る面方向の熱伝導率に比べて厚み方向の熱伝導率が低い欠点がある。

     トクヤマ品はこれを解消しており、絶縁性要求に適合する「S03」は粒子を肉厚化して一般的なBN粒子より熱伝導性を高め、製品化が間近。加えて、粒子の凝集により厚みを持たせて熱伝導率を高めた大粒径凝集タイプ「DF-20」を、需要拡大を見込む金属ベース回路基板用に供給していく。

     用途として想定するパワー半導体用絶縁回路基板は、車両の電動化などによって需要増大が確実視される。高い熱伝導率と強度が強みのセラミックス回路基板の大幅成長が見込まれ、トクヤマも窒化ケイ素粉末・基板の量産体制構築に着手している。

     同時に、金属ベース基板市場も年率17%もの成長率で拡大するとみる。金属に放熱フィラーを添加した絶縁層をコーティングする金属ベース基板はセラミックス品に比べて軽く、薄くでき、コストメリットが見込める点で、ハイブリッド車や電気自動車の電力を制御するパワーコントロールユニットに使用する兆しがある。凝集タイプを中心とするBNフィラーで、絶縁層に使われる高熱伝導樹脂の熱伝導性能向上に貢献できれば、こうした需要も取り込める。

     放熱フィラーを主力に、離型剤や高付加価値化粧品原料向けの薄片単粒子タイプ「K03」も開発しており、品揃えの強化や採用の広がりで28年度にBN事業の売上高を20億円規模にする。同社はAlNフィラーも量産検討設備を設置するなど開発中で、同年度に売上高35億円を計画する放熱フィラー事業でもBNを主力にしたい考え。徳山製造所(山口県周南市)に保有する年数十トン規模のパイロットプラント生産から量産へ移行する設備投資も検討する。
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