• 社説
  • プラスチックの有用性 今後も不変
  • 2023年10月27日
  •  プラスチックに対する逆風が、なおやまない。レジ袋有料化や求める客のみへのカトラリー提供、紙ストローへの切り替えなど、プラスチックを減らす取り組みが進んでいる。しかも少子高齢化や嗜好の変化で、需要先である家電や自動車の生産・販売はかつての勢いを失い、住宅着工件数も大きく落ち込んだ。

     では実際、プラスチックの内需がどうなっているのか。日本プラスチック工業連盟はこのほど、行政や工業団体の統計などをベースに直近四半世紀の国内プラスチック関連製品の需要動向について調査した。日本では1997年にプラスチック原材料の生産量が約1500万トンとピークを迎えた後、下降線をたどり、2022年には約950万トンまで減少している。

     一方、プラスチック製品の生産は原材料の生産・需要に比べ、さほど落ち込みはなく内需は97年とほぼ同水準。むしろフィルムや輸送機器用、容器類を個別にみると、いずれも増加傾向にある。PETボトルではリデュース率は25%程度だが、本数が増えたことで使用される樹脂量は四半世紀の間に3倍となった。

     製品の需要が減っていないのは、国内生産の原材料による国内での製品製造に代わって、製品輸入が増加していることが大きい。この四半世紀で原材料の国内生産量が約500万トン減少、原材料内需が約400万トン減少する一方、製品の輸出入バランスによって約100万トンが補われた。今回の調査報告では「最終消費財として輸入されている製品まで含めれば、結果的に国内のプラスチック使用量は決して減少しておらず、増加している可能性すらある」とまとめている。

     プラ工連が強調するのはプラスチックの有用性だ。環境問題で解決すべき課題があるのは事実だが、便利で生活環境の向上に大いに貢献しているからこそ、需要が維持されている。そこで考えるべきは22年のプラ新法施行や、国連環境総会(UNEA)における「プラスチック汚染に関する法的拘束力のある条約作りのための政府間交渉委員会」(INC)設立決定の影響。INCは24年末までに条約作りを完了する予定だ。INCの本来の目的は、環境に排出されるプラスチック抑制のはずだが、実際にはプラスチック生産・使用量削減や化学物質の安全性が最初に議論される。しかし廃棄物管理が確実になされれば問題の多くは解決できるはず。「INCの結論次第で、いよいよプラスチック内需が落ち込む可能性が高い」とされるなか、この有用なプラスチックを不必要に排除することのないよう状況を注視したい。
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