• 流通・物流
  • 物流2024年問題、化学業界が実行ステージへ 3テーマで着手
  • 2024年3月19日
    • 化学品WGは今月内にアクションプランを策定する(昨年末に開いた第6回全体部会。自主行動計画案を決議した)
      化学品WGは今月内にアクションプランを策定する(昨年末に開いた第6回全体部会。自主行動計画案を決議した)
     トラック運転手の時間外労働の上限規制が4月から導入されるのにあわせ、化学業界も行動計画の実行のステージに入る。メーカー中心に荷主や物流事業者およそ70社で構成する「化学品ワーキンググループ(WG)」(事務局:三菱ケミカル、三井化学、東ソー、東レ)は今月内にもアクションプランをまとめあげ、新年度から取り組みに着手する。骨子は「商慣行の是正」「共同物流」「物流デジタルトランスフォーメーション(DX)」の3テーマ。持続可能な化学品物流の実現に向け企業の垣根を越えた標準化やデジタル化に取り組み、難局を乗り越える。

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     いわゆる「2024年問題」を前に、業界内の物流事業者や発荷主、着荷主が協力して課題解決に取り組むべく、昨年7月、経済産業省や国土交通省が主導する「フィジカルインターネット実現会議」の下部組織として化学品WGが発足した。政府作成のガイドラインを踏まえ、WGは12月に「化学品に関する物流の適正化・生産性向上に向けた自主行動計画」を策定。足下では自主行動計画をアクションプラン化し、30年を当面の目標に、具体的な内容とスケジューリングの詰めの作業に入っている。今月末のWGの全体部会で承認を得て、フィジカルインターネット実現会議に報告する。

     アクションプランは30年までの活動計画を短期と中長期に区分けして盛り込む。最優先事項と位置づけるのが「商慣行の是正」だ。政府の「物流革新に向けた政策パッケージ」に呼応し、ホワイト物流実現のため「納期時間指定の撤廃」や発注から納入までの「リードタイムの拡大」、予約受付システムの導入などによる「荷待時間や荷役作業等の可視化・短縮」、「車上受け・車上渡しの徹底」などの項目が並ぶ。

     実際、危機感を覚えた企業は対応を急いでいる。三菱ケミカルは取引先に対し、製品の注文締め切り日を、従来より1営業日以上余裕を持つことを要請するレター配布を始めた。WGの事務局も務める林寿樹購買・物流本部物流支援部長は「鉄道や海上輸送へのモーダルシフトを進めるうえでもリードタイムの拡大は欠かせない」とし、受注締め切りの前倒しなどで顧客理解の必要性を説く。

    • 企業の垣根を越え持続可能な化学品物流を実現する
      企業の垣根を越え持続可能な化学品物流を実現する
     アクションプランの中核は、トラックや鉄道、船舶、倉庫などの物流リソースのシェアを含めた共同物流の実現だ。WG内には現在、「縦軸」として、コンビナート単位で構成するエリア分科会を設け、集配や消費地への幹線輸送の共同化といった具体的テーマの優先順位付けを始めている。

     他方、政府が今後10年で船舶輸送量を5000万トンから1億トン、鉄道は1800万トンから3600万トンに倍増させるとうたうなか、「横軸」では海上や鉄道輸送、危険物の中小口輸送などを検討する分科会を設置し、複合的なアプローチを採る。

     とりわけ、今後の焦点となるのが中小口輸送だ。従来、個社単位で輸送効率の向上に取り組むには、一車両にフル積載するのが良しとされ、顧客にも必要量以上の購入を求め、発元は在庫保管場所の確保に苦慮する事態が常態化していた。WGは今後、顧客の発注にあわせて輸送するのでなく、運送事業者の事情に沿って需要をコントロールする「デマンド・レスポンス」(需要管理)への発想の転換を求める。
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