• SEMICON サウスイースト・アジアは今年30周年を迎えた
      SEMICON サウスイースト・アジアは今年30周年を迎えた
     <AI時代の成長戦略 半導体トップが描く未来像 SEMICON サウスイースト・アジア2025/上>

     東南アジア最大の半導体産業イベント「SEMICON サウスイースト・アジア2025」が5月20日から3日間、シンガポールで開催された。30回目の節目を迎えた今回のテーマは「Stronger Together」(ともにより強く)。生成AI(人工知能)やクリーンエネルギー、サプライチェーン再編といった激変の時代に、パートナーシップの重要性を再確認する場となった。シンガポール政府関係者や主要半導体企業の経営幹部が集い、それぞれの視点から成長戦略と産業の未来を語った。

     20日の開会式に登壇したシンガポールのタン・シーレン人材相兼第2貿易産業相(当時)は、「世界の半導体市場は、1990年から2020年までの30年間で年平均7・5%の成長を遂げ、その期間の世界のGDP5%を上回る伸びを示した」と半導体産業の成長力を強調した。「自由貿易が、半導体産業の飛躍的な成長を可能にしてきた」と背景を述べ、国際分業とサプライチェーンの相互依存が果たした役割を評価する一方で、「世界の半導体サプライチェーンを支えてきた経済合理性は、地政学的現実によって覆されつつある」と指摘。「シンガポールは志を同じくする国々との統合を深め、パートナーシップを強化していく」と、自由貿易と国際協調の枠組みを通じた成長路線の継続に意欲を示した。

     同日のCEOサミットに出席したシンガポール経済開発庁(EDB)のシンディ・コー副次官は、「シンガポールには、IC設計、ウエハー製造、組立・検査、装置・材料製造まで、半導体のバリューチェーン全体が揃っている」と述べ、「直近2年間で180億シンガポールドル超の研究開発・製造投資を誘致した」と紹介。「安定的で信頼されるビジネス環境」「政策の確実性」「国際的な接続性」「即戦力となる人材」があると説明した。

     <「価値の再配分」を追求>

     半導体の組立・検査大手の台湾・日月光投資控股(ASE)のティエン・ウーCEOは基調講演で、「この産業は、もはや利益だけを求めて動くものではない。いまや、価値の再配分を求めて動いている」と強調し、AI時代の半導体業界は、収益性だけでなく、今後どの領域に価値が移っていくのかを見極めることが、競争において決定的に重要になると強調した。

     その背景として、「AIの影響は、教育、医療、エネルギー、商業、防衛・安全保障にまで及ぶ」と述べ、AIの進展が社会のあらゆる領域を再構成し始めている現状を指摘。「ソフトウエアはハードウエアより20年進んでいる。アーキテクチャ、チップ、材料、パッケージング、すべてを再設計する必要がある」と語り、ハードウエア分野における抜本的な技術革新の必要性を訴えた。

     また、「われわれは40年間、グローバルサプライチェーンの恩恵を受けてきたが、その均衡は崩れつつある」とし、「産業として新たな均衡点を模索する責任がある」と呼びかけた。

     <広範分野で中核的存在に>

    • グローバルファウンドリーズは23年にシンガポールで新工場を開設した
      グローバルファウンドリーズは23年にシンガポールで新工場を開設した
     米グローバルファウンドリーズのティム・ブリーンCEOは、「AIの進化はまだ初期段階にあり、その多くはクラウド上での処理にとどまっている。だが、真のAIの爆発は、それがエッジ(演算処理を行う端末)に降りてきて、われわれが触れ、感じるようになったときに起きる」と強調した。AIの重心がクラウドからエッジへと移る中で、半導体の果たす役割がさらに広がるとの見方を示した。

     クラウドとエッジ、その間をつなぐ接続性が互いに影響を及ぼし合い、半導体需要が循環的に拡大していく構図を「無限ループ」と表現し、その構造こそが半導体産業の持続的な成長を支えると強調した。

     独インフィニオンのルトガー・ヴァイブルグCOOは、パワー半導体の成長分野として電動車や再生可能エネルギーをあげ、「現在、世界のエネルギー供給に占めるグリーン電力の比率は6%にすぎないが、50年には40~80%に達する可能性がある」と述べた。「ソーラー導入量は3年ごとに倍増しており、風力発電も次世代機では15~20メガワット級が主流になる」とし、こうした動きが半導体需要を押し上げていると説明した。

     米サンディスクのデービッド・ゲックラーCEOは、「われわれは、世界の製品における技術革新の限界を定める存在だ」と述べ、半導体があらゆる産業の進化の上限を決める基盤であるとの認識を示した。

     さらに、「あらゆる国が、自国経済において半導体を中核に据えようと目覚めた。これは私たちすべてにとって素晴らしい状況だ」と語り、世界規模での半導体重視の動きが業界にもたらす好機を評価した。その一方で、「安定的かつ予測可能な規制環境は不可欠だ」と強調。「政策形成プロセスに関与し、産業全体の発展のために影響を与えていくことこそ、私たちの本当の責任だ」と業界の積極的な関与を呼びかけた。

     <技術革新支える装置・材料>

     半導体製造装置大手の米アプライド・マテリアルズで半導体製品グループを統括するプラブ・ラジャ氏は、生成AIの進展にともなう消費電力の制約に触れ、「業界は過去17年間でエネルギー効率を1万倍改善してきた。これからの15年で、さらに1万倍の改善が求められる」と指摘。微細化が進むなかで、トランジスタの構造と製造工程が極度に複雑化していることを強調した。

     また「ゲート(電流を流すか止めるかを制御する電極)形成には6~7種類の材料を、2ナノメートル以下の層で積層しなければならない。もはや材料の特性そのものよりも、材料同士の境界面が性能を左右する時代だ。わずか1オングストローム(Å)の違いにも意味がある」と述べた。極限微細化の難しさを訴えた。

     さらに、「コンタクト(電極と配線層をつなぐ接点)形成だけで20ステップを要する。ステップ10がステップ100に影響するほど、工程間の相互作用は複雑だ」と語り、プロセス全体を真空中で一体的に最適化する必要性を示唆。そのうえで、「私たちは、大学、装置メーカー、材料サプライヤー、研究コンソーシアム、半導体メーカー、システム企業など、産業全体のエコシステムと協力しなければならない」と述べ、その実現には分野横断的なパートナーシップが不可欠であるとの認識を示した。

     半導体材料大手の仏ソイテックのピエール・バルナベCEOは「シリコンのような不活性材料を、よりスマートに、より高性能に、より省電力に変えることで、バリューチェーン全体のプロセスや性能を根本から改善できる」と述べ、基板技術による産業貢献を強調した。

     同社のシリコンフォトニクス基板は「世界の次世代AIデータセンターの100%に採用されている」と語り、モバイル、自動車、クラウド、エッジといった新分野への展開を進めるなかで、imec(ベルギー)、Leti(フランス)、MIT(米国)、A*STAR(シンガポール)などとの研究連携を深化させていると説明した。
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