ゼラスCPの上で増殖したiPS細胞の顕微鏡写真
三菱ケミカルグループは、機能性コンパウンド「ゼラス」で再生医療分野に進出する。高い医薬品衛生性や低たんぱく吸着性を売りに医薬品の包装容器などとして展開してきたが、培養特性なども強みに細胞培養基材といった細胞が直接触れる一次容器向けに提案する。シャーレなどの硬質容器は環状ポリマータイプ、チューブなど軟質素材はスチレン系のTPSといった具合に総合的に提案する。医薬品包装、医療機器に続き、再生医療分野を第3の柱に育成する。
ゼラスは、医療機器・医薬品包装向けに設計された機能性コンパウンド。オレフィン系エラストマータイプの「ゼラスTPO」、良ゴム弾性・シール性を有するスチレン系エラストマータイプの「ゼラスTPS」、高透明・低吸着性能を有する環状ポリマータイプの「ゼラスCP」がある。
細胞培養などに用いられる一次基材は標準化やガイドラインが定まっていない状況で、医薬品包装に基づいた規格整備が早晩進むとみられる。研究など理化学用途では主にポリスチレン(PS)が用いられてきたが、生物由来原料基準に対応するデータが不足して、産業化に向けたスケールアップの際には別素材への変更を求められることがあった。再生医療分野では50キログレイの放射線照射(ガンマ線)滅菌が一般的であり、材料への負荷も格段に大きくなる。滅菌耐性が低いと低分子量成分が溶出し、細胞に毒性を与えることがある。
同社は、医薬品包装の実績で培った衛生性と品質を強みに、再生医療分野でも顧客ニーズに応えられるとみている。ゼラスは高い透明性や低たんぱく吸着性に加え、滅菌特性にも優れるのが特徴。ゼラスCPを基材に用いたシャーレで人工多能性幹細胞(iPS細胞)の増殖試験を実施したところ、ゼラスCPは初期播種細胞数に対して4倍以上の増殖が確認された。PSと同等以上の細胞増殖で、培養基材として適用の可能性を確認できた。また、スチレン系のゼラスTPSで同様に試験したところ、こちらも3倍近い増殖を確認。毒性の溶出リスクが低く、培養チューブとして適用できることが示された。
今後、ゼラスCPはシャーレやフラスコなどの硬質容器、ゼラスTPSは、延伸チューブやピペットチップなど軟質材料へ提案する。また、ゼラスCPとゼラスTPSは熱融着でアッセンブリできるため、これらを組み合わせることで気密性(接合強度)を確保したデバイス作成も可能となる。PSは熱融着温度が270~310度Cと比較的高温が必要だ。接着剤(溶剤)接着も考えられるが、毒性ケアや気密性の確保の観点では熱融着にメリットがあり、ゼラスCPとTPSはより低温での融着が可能だ。
同社の医療用機能性コンパウンドは、バイオ医薬品などの包装用途で30年以上の実績を持つのに加え、2020年に医療用ウレタン系樹脂の米社を買収するなどインプラントやカテーテルといった医療機器分野も強化している。再生医療を新たな柱に据え、製品ポートフォリオの拡充を図る。再生医療は黎明期にあるが、国内市場は20年時点の9500億円から、50年には2・5兆円に拡大するとの試算もある。材料の知見を生かして、今後新規参入するスタートアップやアカデミアの需要を広く獲得していきたい考え。