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  • トクヤマ、ライフ売上高30年度めど倍増 診断事業獲得弾み
  • 2025年6月19日
     トクヤマは、ライフサイエンス事業の売上高(2025年度見通し460億円)を30年度までに2倍に引き上げる。牽引するのは、JSRからの大型買収に踏み切った診断事業。優劣を決める要にもかかわらず外部依存してきた抗体やラテックス(磁性粒子)の技術や薬事の知見を一気に獲得することで、試薬開発の速度を年単位で短縮し、新規市場にも打って出る。好調な歯科器材事業は虫歯治療の詰め物となるコンポジットレジン(CR)の新拠点開設の検討に入った。低迷する原薬・中間体は、抗がん剤のジェネリック医薬品(後発薬)など高薬理活性品に舵を切ることで活路を見いだす。

     診断薬(試薬)は、一般に、ラテックス粒子の表面に結合させた抗原や抗体で血清中の目的物質を捉えて検出する。試薬の開発は粒子と抗原、抗体の性能に左右され、トクヤマはいずれも外部調達してきた。試薬に適した原料を遺伝子工学的に開発できるJSRの事業は「喉から手が出るほど欲しかった」(横田浩社長)ピースであり、「開発スピードを1年近く縮められる」(岩崎史哲専務)。

     26年度からは、単純合算で買収事業の約150億円の売り上げが上積みされる。加えて、向こう1~2年は、大病院向けのシステム導入を得意とするトクヤマと、検査センターなどに強いJSRの販売網を活用したクロスセルや、事業インフラの統合による合理化効果を発揮する。

     JSRはリウマチなどの自己免疫疾患や遺伝子変異などを検査するコンパニオン診断、トクヤマは生活習慣病などを手がけている。30年に向けてはJSRの抗体、粒子の開発力を生かして新規試薬開発を急ぐ。トクヤマ側で手薄だった薬事対応の人員も拡充され、パイプライン開発にも弾みをつけた格好だ。

     歯科器材は今年2月、CRについて、原料の球状フィラーを混練し、充填・包装する「MD8棟」を鹿島工場(茨城県神栖市)内に新設した。需要は旺盛なことから「(次期設備が)3年後にも必要になるのではないか」(横田社長)との認識で、すでに次期MD9棟の検討にも着手。鹿島には余剰敷地がないことから、球状フィラーを加工したり、混練する設備の新設は海外も選択肢に、新たな立地検討のステージに入った。

     原薬・中間体は過去数年、研究人材を成長期待の診断事業に振り向けてきたことで、パイプラインの先細りが顕著だ。従来の生活習慣病では成長に限りがあると判断し、今後は高薬理活性分野にシフトする考え。抗がん剤の後発薬などをターゲットに据え、クリーンルーム拡充など投資を計画する。

     JSRの診断事業買収によって抗体や遺伝子解析技術を得たことで、長期的には事業間の垣根を越えたシナジーや新規事業創出も視野に入る。治療に主眼を置いてきた歯科器材事業についても、今後は唾液中のたんぱくを検出して歯周病リスクを測定するといった予防の観点で新たな事業を立ち上げていきたい考え。

     30年以降を見据えては、患者ごとに遺伝子を解析する個別化医療や、予防から予後管理を含めた精密医療市場への参入を目指す。
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