植物内生酵母を使用し白未熟米の発生を抑制できることを確認(栽培地:京都市、品種:ヒノヒカリ)
ファーマフーズは、米作りで用いるバイオスティミュラントを実用化し、普及させる。開発を進めているのは植物内生酵母。数年前から日本各地の水田で実証を行っているが、収穫量が増えるとともに、食味ならびに品質が低下する白未熟米(白未熟粒)の発生を抑制することができたというデータが得られている。ただ、実際に米農家に使ってもらうためにはバイオスティミュラント散布にかかる労力を軽減したり、コストダウンを図ったりする必要がある。今後、生物系特定産業技術研究支援センター(生研支援センター)に採択された事業を通じてオープンイノベーションでこうした課題を解決し、猛暑日が増加しているなかでも高収量、高品質な米作りに役立つバイオスティミュラントを製品化し、社会実装させる。
ファーマフーズは農業資材であるバイオスティミュラントの研究開発に注力している。数種類のバイオスティミュラントを手がけているが、進展している一つが植物内生酵母。すでに、土壌や水などの環境中に広く存在するカンジダ パラプシローシスを1ミリメートル程度の大きさのパーライトに担持させたバイオスティミュラントを販売している。有機JAS資材として登録されており一部、トマトやイチゴの栽培で使用されている。
植物内生酵母は植物の根の中に入り込んで共生し、根張りを促進する。この結果、栄養をより多く吸収することができ、収量増加につながる。高温耐性および塩ストレス耐性も向上させられるなどさまざまな特徴を兼ね備えている。植物内生酵母を農作物の栽培に生かしていくうえで米、パプリカ、トマト、イチゴを重点に定め研究開発に取り組んできたが、とくに米作りで有効があることがわかった。
ヒノヒカリを栽培している京都市内の田んぼで2022年から実証を続けている。夏場に水田の水を抜いて土にひびが入る程度に乾かす「中干し」時に1回、パーライトに植物内生酵母を担持させたバイオスティミュラントを散布。バイオスティミュラントを撒いていない通常の方法で栽培している区画との収穫量を比較したところ毎年、バイオスティミュラントを散布した区画の方が収量が増えた。
米粒が白く濁る白未熟米の発生も抑えられた。京都に加えて宮城県、秋田県、宮崎県の農家で実証したところ、いずれもバイオスティミュラントを活用した方が通常栽培に比べて白未熟米が生じる割合が顕著に下がった。白未熟米は猛暑によって発生しやすいが、米の等級低下を防げることが期待される。
このバイオスティミュラントを米農家で利用してもらうためには散布する時期と方法、コストなど解決すべき課題がある。実証では中干し時に手でまいたり、動力噴霧器を使って散布したりしているが、非常に暑い中での作業となるため、農家の負担は大きい。ファーマフーズでは春の育苗期に1回、育苗箱を設置するプールに投入するだけですむ散布方法を検討している。今後、この手法に適した、水に溶ける粉末タイプのバイオスティミュラントを開発し、収量や品質に関わる効果を確かめる。
この取り組みはオープンイノベーションで進めていく。このほど、生研支援センターが公募していた「令和7年度オープンイノベーション研究・実用化推進事業」に応募した「気象変動に対して高品質な米作りを持続可能にする新たなバイオスティミュラント製剤の構築と社会実装」が採択された。東京大学の晝間敬准教授、伊藤忠商事グループの伊藤忠食糧(東京都)と連携して新しいタイプのバイオスティミュラントの有効性を検証する。また、この事業ではバイオスティミュラントを使用する一方で、化学肥料を減らしても米の収量や品質に影響を及ぼさないかといったことも調べるとしている。