共同でプラットフォーム開発に挑む(左から千代田化工建設の伊藤利之執行役員、ZACROSの佐々木智之執行役員、クラレの小林氏、サイフューズの秋枝社長)
クラレやサイフューズ、ZACROS、千代田化工建設の4社は1日、再生医療の産業化に向けて細胞の大量培養プラットフォームを共同で構築すると発表した。第一弾として、サイフューズが再生医療などの製品向けに開発を進めるヒト細胞を対象に実証を進め、ZACROSの培養リアクターやクラレの化学合成足場材を用いて細胞を培養する。千代田化工の分析評価技術などを用いてデジタルツイン化することで、小スケールの分析結果を大スケールに適応するソフトを開発する。向こう1年半程度でプラットフォームを構築し、得られた細胞をサイフューズの3Dプリンティング技術で積層化することを目標とする。2030年近傍には製薬会社や開発・製造受託(CDMO)などへもサービスを提供したい考え。
同日、都内で4社合同の記者会見を開催した。細胞の培養は従来、シャーレやフラスコなどの平面培養が主流だったが、将来の産業化を見据えた場合には、バイオリアクターを用いた3D立体培養による大量培養や自動化が欠かせない。もっともスケールアップする際には細胞や撹拌の状態を各スケールモデルで検討する必要があり、「小規模から大容量へとリニアに進まない課題があった」(クラレの小林悟朗研究開発本部ライフイノベーション事業推進部長)。
今回の実証では、クラレの細胞培養足場材であるPVA製マイクロキャリア「スキャポバ」を活用して、ZACROSのバイオリアクターで細胞を大量培養する。ラボスケールでの培養状態を、千代田化工の数値流体力学(CFD)による流体可視化技術やAI解析を組み合わせてデジタルツイン化。商業規模での細胞培養状態を把握し、培養結果を予測可能なシミュレーションソフトを開発する。
当面対象とするのは、サイフューズが末梢神経や骨軟骨再生などを対象に開発を進める再生医療等製品向けの細胞で、ヒトの間葉系間質細胞(MSC)を使用する。1年半後をめどに、サイフューズが3Dプリンターで細胞を積層し、実際に移植できる程度の品質を確保したい考えだ。中長期では、開発プラットフォームを他の製薬企業やCDMOにも展開していく。
サイフューズやクラレ、ZACROSは、14~18年に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)/日本医療研究開発機構(AMED)プロジェクトにおける幹細胞評価基盤技術研究組合に参画し、細胞製造の開発において接点を持ってきた。20年にはサイフューズとZACROSが業務資本提携を結ぶなど連携を深めている。サイフューズの秋枝静香社長は「開発成果を生かし、再生医療などの製品向けの細胞の大量製造技術の確立と実用化に貢献したい」と語る。