• ダイキン工業が紹介するLiB用正極材向けバインダー(左から2番目)。スラリーの流動性低下を抑制できる
      ダイキン工業が紹介するLiB用正極材向けバインダー(左から2番目)。スラリーの流動性低下を抑制できる
     <ケミマテ’22>

     <素材で変えるデジタル社会/1>

     日々の生活に欠かすことのできない電子製品。その性能は、電子素材・材料の特性によるところが大きい。28日まで開催の「ケミカルマテリアルジャパン2022オンライン」(化学工業日報社主催)では、化学メーカーが電池や半導体などに向け、さまざまな素材・材料提案を行っている。

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     スマートフォンから電気自動車(EV)まで幅広く搭載されるリチウムイオン2次電池(LiB)は、化学メーカーが開発した素材が数多く使用されている。正極、負極、電解液、セパレーターが4大部材として知られるが、このうち正極や負極といった電極は、数多くの材料で構成される点が特徴だ。例えば、正極はニッケルやコバルト、マンガンといった活物質を集電体に活着させて製造する。この接着剤の役割を担うバインダーは近年、メーカー各社が相次いで新製品を発表。少量での高い結着特性や次世代活物質への対応など、さまざまなバインダー開発が進められている。

     大阪ソーダが展示する水系バインダーは、結着性とイオン伝導性を併せ持つ点が特徴。独自の配合技術と重合技術を駆使することで、一酸化ケイ素(SiO)などの次世代高容量負極に適用した場合でも高いサイクル特性を発揮することを確認している。

     昭和電工/昭和電工マテリアルズは、シリコン系負極向けのバインダーを展開する。シリコンは既存のカーボン系に比べ高い理論容量を持つものの、充電時に体積が膨張する性質を持つため、集電体から剥離することが課題として挙げられている。この対応策として、昭和電工マテリアルズでは塗膜強度に優れたポリアミドイミド樹脂をバインダーに採用。電極変形の抑制に成功した。通常は数%のみ使用のシリコン系活物質を30%まで高めた場合でも、変形抑制に加え電池容量も維持するという。

     フッ素樹脂バインダーを紹介するのはダイキン工業。変性ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用いた正極用バインダーは、スラリーの安定化や電極の高密度化を実現した。ハイニッケル系活物質を用いた場合でも、スラリーの流動性低下を抑制するほか、クラック性の改善に寄与するという。今後は単層カーボンナノチューブ(CNT)を含有したバインダーや正極のドライプロセスを可能にするバインダー材料の製品化を狙うなど、LiBのトレンドに合わせ、最適なソリューション開発に力を注いでいく。

     UBEは、2次電池バインダー用「ユピア-LB」をアピールする。LiBのバインダー用途に最適なワニスで、銅やアルミなどに対し高い活着性を有している。このため、集電体との密着性の向上が可能となる。また、電解液への耐性も強いため、電解液浸漬中でも破断耐性や密着強度などの性能を保持する。
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