• 昭和電工の川崎のケミカルリサイクル設備。100%廃プラ由来の水素利用を目指す
      昭和電工の川崎のケミカルリサイクル設備。100%廃プラ由来の水素利用を目指す
     <2050持続可能な未来へ アンモニア/2(その2)>

    【1面からつづく】

     アンモニアの国内メーカーのなかでも独自色を発揮しているのが昭和電工だ。川崎事業所(神奈川県)のアンモニア設備(生産能力12万トン)の水素源は、1931年の創業当時の水電解法を皮切りに、コークス炉ガスやナフサ、近隣の製油所からのオフガスなどへと変遷。2002年には都市ガスに切り替えたが、液化天然ガス(LNG)の価格変動に競争力を左右されるのを避けるため、原料多様化の一環で翌年から踏み出したのが、ケミカルリサイクル設備「KPR(川崎プラスチックリサイクル)」によるガス調達だ。

     KPRでは、廃プラなどを破砕・成形したものを低温ガス化炉(600~800度C)と高温ガス化炉(1400度C)の2段階で部分酸化し、水素と一酸化炭素(CO)の合成ガスに改質する。足下のアンモニアの水素源は都市ガスと廃プラが半量ずつで、廃プラについては一般家庭から出る容器包装リサイクル法に準拠したプラスチックの1割、年間およそ6万トンを処理している。

     同社は、ガス化炉にはまだ処理余力があるとみており、今春に施行したプラスチック資源循環促進法も機に12万トン程度の廃プラが集まれば、都市ガスを使用しない100%廃プラ由来のアンモニア生産も可能とみる。横浜市など近隣大規模都市が製品プラ回収に出るタイミングを見極めながら、「25年には100%化を達成したい」(山口立太・基礎化学品事業部化成品部長)考えだ。

     アンモニアについてはクリーン燃料アンモニア協会(CFAA)などがクリーン製品の定義案の策定に努めているが、グリーンやブルーの線引きが明確ではなく、議論が進められているところだ。

     こうしたなか、富山工場(富山市)で10万トンの能力を持つ日産化学は今年、アンモニア系製品で最大の売り上げ規模を誇っていたメラミンについて、供給過多で採算回復の見通しが立たないことから稼働を停止したが、「尿素にしたり、CO2を回収して液化炭酸ガスに転換する現状が今後どう評価されるか注視している」(同社)。メラミン以外の尿素誘導品であるアドブルーや半導体など向けの高純度品は需要が伸長しており、まずは川下事業の強化に主眼を置く。

     エチレンセンターのCNを目指し、そのCO2排出量の大半を占めるナフサ分解炉のテコ入れに向けた取り組みも始まった。グリーンイノベーション基金を通じた取り組みで、従来、燃料の主原料として利用していたメタンをアンモニアに転換することで、燃焼時に発生するCO2を限りなくゼロに近づけようというもの。実証期間は21年度から30年度までの10年間で、三井化学を主体に丸善石油化学や東洋エンジニアリングなどが参加している。26年度までの第1フェーズでは三井化学の大阪工場に1万トン規模のナフサ分解炉の試験炉を設ける。27年度から30年度の第2フェーズでは同工場と丸善石化の千葉工場に数万トン規模の実証炉を設けて性能確認をする。アンモニアは窒素を含むため、燃焼時のNOxを低減したり、メタンより遅い燃焼速度を考慮したバーナー開発などが肝となる。三井化学は最終年の30年度には少なくとも1炉をアンモニア専焼炉にすべく、技術開発を急ぐ。
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