• IHIが世界で初めて液体アンモニア燃料発電に用いた2000キロワット級ガスタービン「IM270」
      IHIが世界で初めて液体アンモニア燃料発電に用いた2000キロワット級ガスタービン「IM270」
     <2050持続可能な未来へ アンモニア/4(その1)>

     燃料アンモニアは日本の石炭火力混焼用途で世界で初めて実用化される。JERAは碧南火力発電所(愛知県)4号機を用いて20%混焼の大規模実証運転を1年前倒しし、2023年度から実施することを決めている。その後の投資決定、プラント建設などを経て、順調にいけば27年ころに商業運転をするスケジュールとなる。【2面に関連記事】

     他の大手電力にも石炭混焼燃料としての採用が広がれば、政府が掲げる30年に年300万トンの燃料アンモニア需要は現実味を帯びる。発電用途あるいはアンモニア燃料船向けのサプライチェーン(SC)がまず確立しコストが下げれば、石化コンビナートにおける原燃料用途の可能性が広がる。水素キャリアとしてのアンモニアの優位性の評価にもつながってくる。

     <市場先行し優位に>

     市場の立ち上がりで日本が先行するということは、日本企業は市場参入で有利なポジションを得ることになる。海外でアンモニアを製造し日本に輸送するSC構築に向けた複数の検討が進められており、電力、石油、商社などが中心的な役割を果たしている。プラント企業はアンモニアの製造、輸送・貯蔵、利用の格段階で技術面で貢献しており、日本での成功がアジアに波及すれば事業機会を広げることが可能となる。

     日本の超々臨界圧石炭火力発電プラントの発電容量は合計2万7000キロワットに上り、すべてを20%混焼に切り替えると1300万トン超の燃料アンモニア需要が生まれる。アジア各国の石炭火力プラントは日本よりも新しいプラントが多く、日本以上に長く使いたいとの意向が働く。

     <欧州で積極導入も>

     アンモニア混焼は石炭火力の延命につながるとの批判はあるが、「高効率の発電プラントであっても新設すれば大量の二酸化炭素(CO2)を発生する。既設設備のプロセスを低炭素化して使い切ることには合理性がある」(IHIの井手博社長)との反論に説得力はある。燃料アンモニアの環境評価に厳しい姿勢をみせていた欧州でも、ドイツが積極導入に転じるなど変化が生まれている。

     石炭火力発電ボイラーではIHIと三菱重工業が日本、アジアで多くの納入実績がある。IHIはJERAの碧南での実証に参加し、海外ではマレーシア、インドネシア、インドで現地企業とともに石炭火力混焼に関する調査事業を進めている。三菱重工も今後の国内電力の石炭火力混焼への移行をサポートしていくとともに、海外ではインドネシア、チリなどで実証事業に参加している。

     CO2排出が少ないと評価されている液化天然ガス(LNG)も、カーボンニュートラル実現には水素・アンモニア混焼、さらには専焼へと置き換わっていく。アンモニアガスタービンの開発では三菱重工は大型高効率~中型、IHIはコジェネ用の中小型に注力して開発を進めている。

     三菱重工の大型高効率ガスタービンはまずアンモニアを水素に分解して燃料に用いる方式を採用。「分解触媒の性能にめどがつき、実証機での確認に入る」(谷村聡エナジートランジション&パワー事業本部GTCC事業部ガスタービン事業部技監・技師長)方針で、技術が確立すれば水素キャリアとしての活用に道が開ける。両社とも中小型はアンモニアをガス化、あるいは液体のまま直接燃焼に用いる方式で、逆火、NOx(窒素酸化物)低減などの課題解決に取り組んでいる。
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