• 環境課題 連載
  • 「緑色回復」めざす中国化学 量・質両面でCN拡大
  • 2023年10月17日
    • 石化大会には国内外石油・化学企業、関連団体の代表者2300人以上が参加した
      石化大会には国内外石油・化学企業、関連団体の代表者2300人以上が参加した
     <「緑色回復」めざす中国化学/上>

     【上海=中村幸岳】先月、寧波(浙江省)で中国国際石油化工大会が4年ぶりに平常開催された。テーマは「不確実性を克服し、共にグリーンな回復を」。全体会議や日中化学産業対話の議題も、グリーントランスフォーメーション(GX)とハイエンド化で占められた。中国の化学品生産シェアは売上高ベースで世界全体の4割に達し、なお拡大が見込まれるが、国内では石油化学品や電池材料の市場競争がし烈を極める。構造不況も指摘されるなか、中国企業は輸出や海外生産進出に活路を見いだそうとしている。

     <拡大一辺倒に転機>

     世界的に化学産業の焦点がGXに収れんしつつあるなか、1990年代以降30年にわたり拡大一辺倒だった中国化学業界も変化を迫られている。

     2030年のカーボンピークアウト、60年のカーボンニュートラル(CN)を目指す政府目標のもと、当局は製造業に対し二酸化炭素(CO2)の排出量と排出原単位を基準とする環境規制を設定。化学産業では省エネの観点から、基礎原料エチレンを生産するナフサ分解炉は年産能力が80万トン以上、合繊原料の高純度テレフタル酸(PTA)は同100万トン以上でなければ新増設許可を原則得られなくなった。

     石化大会を主催した中国石油・化学工業連合会(CPCIF)によると、中国の産業全体に占める化学分野の温室効果ガス(GHG)排出量は10%(日本は約15%)。やはり4年ぶりの対面開催となった日中対話では、両国化学業界がCN化に寄与するソリューションを積極的に提供していくこと、循環経済構築のため両国が協力可能な分野を探索していくことが提案された。

     参加した日本化学企業の現地トップも「不景気で明るい話題を見つけにくいなか、化学産業のGHG排出が大きく、手を携えてこれを削減しなければならないとの点で合意を得たことは前進といえる」と、CNに向けた日中協力に期待を示す。

     <競争力強化の手段>

     中国化学産業界はCNを目指しつつ、量・質両面でさらに拡大を目指す構えだ。日中対話で講演した中国国家気候変動戦略研究・国際協力センター(NCSC)国際協力交流部の張志強主任は「CNは目的ではなく、産業競争力強化のための手段だ」と強調した。

     実際、中国では3大国有石油を中心に大規模なCCUS(CO2の回収、利用、貯留)プロジェクトが増え、その周辺では回収CO2を原料に使う低環境型化学品の生産プロジェクトも競って打ち出されている。

     中国石油(ペトロチャイナ)は、中国のCCUSによるCO2排出削減量は25年に年間約2400万トン、CN目標年の60年には同約23億トンを超えると予測する。

     中国海洋石油集団(CNOOC)の霍健副総経理は石化大会全体会議で、海南省で回収CO2を原料に一酸化炭素と水素からなる合成ガスを得て、同ガスを原料に酢酸を年80万トン、液状アンモニアを同22万トン生産する計画を発表した。

     中国では26~27年頃にかけて、回収CO2やグリーン水素を原料とする「緑氨(グリーンアンモニア)」と「緑甲醇(同メタノール)」の生産設備が、計画ベースでそれぞれ年400万トン以上立ち上がる。

     <PI品質大幅向上>

     「未曾有の変化に直面するなか、われわれは先端材料の育成に力を入れる必要がある」。CPCIFの傅向昇副会長は石化大会開会にあたり、通商摩擦や不景気など克服し中国化学産業が成長を継続するため、製品ハイエンド化が不可欠であるとあらためて強調した。

     近年の中国産化学品の高付加価値化を象徴するのがスーパーエンプラ。エンプラ中最高水準の機能・物性を持つケトン系樹脂も国産化が進む。

     例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)は吉林大学が、旧ICI(英国)の流れを引く英ビクトレックスやサウジ基礎産業公社(SABIC)など世界大手と同じ求核置換反応による重合技術を開発。中潤化工(盤錦市)や金発科技(広州市)、山東君昊(済寧市)などに技術供与し、それぞれ年間数百~2000トンレベルで商業生産の本格化を目指している。

     最大手ビクトレックスも中国政府の国産品調達を増やす方針を受け昨年、盤錦市(遼寧省)でPEEK工場を立ち上げた。長年の原料サプライヤーである中国企業との合弁を通じて生産に乗り出した。

     絶縁材料やフレキシブルプリント基板に使われ、日韓、米国などの企業が高いシェアを握るポリイミド(PI)も、中国が国産化を急ぐエンプラの一つ。樹脂では中節能万潤股份(煙台市)、繊維は奥神新材料(連雲港市)、フィルムは瑞華泰薄膜科技(深圳市)や国風新材料(合肥市)などが代表的なメーカーで、各社増産投資を重ねる。

     ある在中国日系ユーザーは「ここ5年で中国製PIの品質が飛躍的に伸びた」と話す。欧米、日本企業に比べ歩留まりはまだ低く、10マイクロメートル以下の超薄物フィルムの安定生産も実現していないが、現地に工場を持つ日系電子・電気メーカーがほぼ全て、中国産PIを使用するまでになっている。
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