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  • 化粧品総合特集 R&Dトップに聞く 花王・研究開発部門 スキンケア研究所長・宮木正廣氏
  • 2023年10月23日
     本質研究と顧客に寄り添う商品開発に力を入れており、より高い体験価値の商品を提供することを強く意識している。こうした取り組みから、ヒット商品も着実に生まれている。

     例えば、ミストタイプの日焼け止め「ビオレUV アクアリッチ アクアプロテクトミスト」は、長きにわたって進めてきた技術開発がベースとなっている。スプレーすると、霧のようなミストが肌を覆い、肌上ですばやくジェル状に変化してムラなく密着する。ここには随所に独自の技術が盛り込まれており、本質研究の最たるものといえる。

     外出先での紫外線対策では、多くの人が塗り直しに潜在的なストレスを感じていることに着目して開発に取り組んできた。機能性の高さや使い心地の良さから、発売から6カ月間で600万本以上を出荷。幅広い生活者の支持を実感し、本質研究の生かし方が間違っていなかったと確認することができた。

     また、今春に発売したメーク落とし「ビオレ ザ クレンズ オイルメイク落とし」は、毎日のメーク落としの潜在的なニーズを丁寧に切り出した新たな技術を搭載し、好評を得ている。これまではメークとメーク落としをくるくるなじませる必要があったが、その行為を手間と感じたり、なじませる際の手と顔の摩擦に負担を感じる方も少なくなかった。

     そこで、物理力に頼らずにメークを落とせる技術の確立を目指した。塗布すると肌が水になじみやすくなり、ウオータープルーフマスカラや落ちにくい化粧下地などのメークも、肌から浮かせてしっかり洗い流すことができる。

     いずれの商品も、生活に必要な状況を事前に想定して技術を作り込んだ。既存の商品とカニバリ(共食い)を起こさず新しい顧客を呼び込み、市場の拡大に貢献できたと感じている。

    • 日焼け止め「ビオレUV アクアリッチ アクアプロテクトミスト」は、発売半年で600万本以上を出荷する大ヒット商品となっている
      日焼け止め「ビオレUV アクアリッチ アクアプロテクトミスト」は、発売半年で600万本以上を出荷する大ヒット商品となっている
     一方、歴史や伝統ある技術をさらに伸ばすことにも力を入れており、真皮や表皮といった肌の機能を探求するアプローチを深めている。

     炭酸の新たな知見も報告した。炭酸ガスが経皮吸収されると肌内のpHが低下するが、その環境下では、肌の弾力性維持に欠かせないエラスチン、コラーゲン、ヒアルロン酸の産生が促進することを突き止めた。

     また、表皮のヒアルロン酸の産生を高めることで十分な厚みがあり、潤いとハリに満ちた表皮の形成につながることも新たに確認した。独自開発のN-アセチルグルコサミンの誘導体が、表皮細胞によるヒアルロン酸産生を促すことも分かった。今後も本質研究によって新しい価値を生み出し、提供していきたい。
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