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  • 化粧品総合特集 R&Dトップに聞く コーセー・取締役 研究所長・小椋敦子氏
  • 2023年10月23日
     昨年度から「グローバル」「ジェンダー」「ジェネレーション」の3Gをキーワードに掲げて顧客層拡大に力を注いでおり、今年度はさらに3Gの定着化を進める1年だと捉えている。例えば、男性と女性の肌パラメーターは性差よりも個人差のほうが大きいことが分かってきており、「男性用」「女性用」と区別しないジェンダーフリーの製品開発を強化していく。

     近年、子どもの成長過程でも適切なスキンケアの有用性が広く知られている。昨年当社では園児のスキンケア習慣化を目指した実証実験を実施し、2歳以上の子どもでは自発的なスキンケア習慣を促し、定着化できることを確認した。今後も性別や年齢にとらわれず、グローバルで評価される独自の価値を創造したい。

     一方、さまざまなステークホルダーと互いを高め合う関係づくりを目指す「コーセービューティパートナーシップ」を経営のキーワードに据え、大学や企業との共同研究も幅広く進めている。

     東京工業大学との共同研究では高速プロジェクションマッピング技術を活用して、実際の顔で体験できるリアルなメークシミュレーションシステムを開発した。この技術は東京・銀座のコンセプトストアで展開しているメークシミュレーターに応用し、今年1月に米ラスベガスで開かれた世界最大級のテクノロジー見本市「CES」にも出展した。ビューティーテック領域でも当社のサービスが高く評価された。

     素材・原料メーカーなどと互いに知恵を出し合い、密な関係を続けてきたことで実現できた成果もある。

     信越化学工業とは、こすれに耐える強靱さと表情の動きにもくずれない柔軟さのある化粧膜を形成できる樹脂素材を共同開発した。これは化粧もち成分として複数のメーク商品に応用している。

    • 強靭さと柔軟さを兼ね備えた素材を配合した化粧下地「エスプリーク トリプル ラスティング プライマー」
      強靭さと柔軟さを兼ね備えた素材を配合した化粧下地「エスプリーク トリプル ラスティング プライマー」
     勇心酒造のもつ、日本で初めて「肌の水分保持能改善」と「シワ改善」の両効能が認められた有効成分「ライスパワーNo.11+(プラス)」をいち早く製品に配合し、油性バームなのにみずみずしい新感触の薬用高保水密封バーム「ワンバイコーセー セラム シールド」の発売につなげた。

     また、世界でも有数の植物研究施設との共同研究では、肌のバリア機能を高めるキンコウボク花エキスを開発し、9月に発売した「コスメデコルテ AQ」の新スキンケアラインに配合している。

     さらに丸善製薬とは、10年以上にわたる共同研究を続け、このたび新たな美白有効成分の承認を取得した。こちらは今後のスキンケア商品への応用を進めている。

     今後もビューティーパートナーシップを強化することで高付加価値な化粧品開発を支えるイノベーションを加速させるつもりだ。
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