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  • 化粧品総合特集 R&Dトップに聞く ポーラ・オルビス・執行役員 グループ研究・知財薬事センター担当・末延則子氏
  • 2023年10月23日
     「感受性のスイッチを全開にする」という企業理念のもと、強みの「皮膚科学」「製剤技術」「感性工学」を生かした高品質な化粧品を開発している。近年は、化粧品の枠を超え、社会やウェルビーイング(心身の健康)領域でも新規事業を創出し、生活者の期待に応えている。

     数ある肌悩みのなかでも多く挙げられるのがハリ・弾力の低下だ。肌の最表面である角層が硬いと肌内部からのハリ・弾力は実感しにくい。そこで当社では、適切な油剤の組み合わせにより細胞間脂質のラメラ構造の並びにゆとりを持たせることで、角層の柔軟性をコントロールできる可能性を見い出した。

     ハリ・弾力の向上に着目した製品として、乳液を兼ねた美容液「B.A グランラグゼ Ⅳ」を今月から発売している。テクスチャーや容器のデザイン、包装など感性品質も細部にまでこだわり、当社の強みの集大成ともいえる製品に仕上げた。

     近年、コロナや気候変動を背景に、生活者のコミュニケーションやスキンケアの捉え方が変化している。個性が尊重される時代になり、よりパーソナライズされた化粧品が求められつつある。

    • ハリ・弾力の向上に着目した乳液を兼ねた美容液「B.A グランラグゼ Ⅳ」
      ハリ・弾力の向上に着目した乳液を兼ねた美容液「B.A グランラグゼ Ⅳ」
     個々人に合わせた価値の提供に向け、iPS細胞から皮膚を再現する「ミラースキン」の研究に取り組んでいる。ミラースキンの研究拠点となるシンガポール研究所の設立を2024年に予定しており、現在はシンガポール科学技術研究庁(A*STAR)などと共同研究を推進。同年末までに10人程度の研究員を派遣する。

     また、製剤技術の強化に向け、横浜市の研究所内に建設しているテクニカルディベロップメントセンター(TDC)が24年中頃にも本格稼働する。化学的技術だけでなく物理的技術により、新たな剤型を作り出すことを目指す。従来の化粧品製造には使われてこなかった新たな設備も導入する計画だ。

     DIYコスメ用に独自開発した乳化剤「M-ポリマー」を用いた新技術の開発にも力を注ぐ。M-ポリマーは加熱しなくても乳化を可能とするが、当社ではさらに、濃度をスイッチとした乳化と分離の制御を実現。これを応用することで「乳化物リサイクル」を達成できるとみている。

     化粧品の枠を超え、社会やウェルビーイング、ウェルネステック領域への展開も強化中だ。さらに、ポーラ化成工業は、美容クリニックを運営する一般社団法人アストロノーツとの共同研究を開始し、美容医療機器や肌計測機器とグループ独自成分を組合せたクリニック専用の商材・サービスの研究開発を始める。エビデンスに基づく美容医療関連領域での新価値創造に取り組んでいく。
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