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  • 化粧品総合特集 R&Dトップに聞く ミルボン・取締役開発本部長 オーガニック事業担当・武田靖史氏
  • 2023年10月23日
     新型コロナウイルスの影響によって、化粧品市場は国内消費の低迷やインバウンド(訪日外国人)需要の減少など大きな打撃を受けた。当社も美容室の休業など当初は苦戦を強いられたが、その後は順調に回復している。だが、ウクライナ情勢を背景とした石油エネルギーの高騰や原材料価格の上昇、為替の影響など新たな課題も浮上している。

     また、近年はESG(環境・社会・企業統治)の重要性が増している。大きく変化する社会情勢に適応し、さらなる価値の提供を目指して、これまで以上に知恵と工夫を凝らした開発活動が求められていると考える。

     ヘアデザイナーとその先の来店客に満足してもらうために、「TAC製品開発システム」という仕組みで製品を開発している。今年度は、くせ毛にダメージが重なって広がり、ツヤが失われた毛髪に対して、乾かすだけでツヤとまとまりが保たれる髪へと導く「オージュア インメトリィライン」を発売し評価を得ている。

    • くせ毛にダメージが重なって広がる毛髪を、乾かすだけでツヤとまとまりが保たれる髪へと導く「オージュア インメトリィライン」
      くせ毛にダメージが重なって広がる毛髪を、乾かすだけでツヤとまとまりが保たれる髪へと導く「オージュア インメトリィライン」
     パナソニックとは、美容液を微細化して噴霧できるヘアドライヤーの共同開発に取り組み、根元から毛先までの均一なケアを可能とする次世代型ドライヤーとして展開を始めた。ほかにも、大阪公立大学大学院医学研究科との研究や、5-アミノレブリン酸リン酸塩(5-ALA)の経口摂取による表皮への美容効果検証、毛髪補修に適したケラチン原料の開発などさまざまな角度から基礎研究を進め、製品開発を支えている。

     当社は新たな美容室のあり方として「ビューティプラットフォーム構想」を掲げている。美容室が来店客の美しさへ生涯にわたって寄り添う場所を目指すという構想だ。開発本部では外部パートナーとの協業なども含め、ヘアケアのみならず、スキンケア、ビューティヘルスケアなど美容室を通じて幅広い美容サービスを提供していく「ビューティライフケア戦略」に取り組んでいる。業種や分野の垣根を越え、あらゆる情報を統合した研究開発にチャレンジしていく。

     また、米国、中国、タイにR&Dを設立し、国内の中央研究所と連携したグローバルな研究開発体制も整えた。日本発のグローバル製品に加え、それぞれの国や地域の風土、気候、法規制、美容習慣などを踏まえたローカル製品開発を進めていく。

     2023年末には、より長期的な視点での製品・サービス開発を担う研究開発センターを羽田空港に近い羽田イノベーションシティで稼働させる予定だ。他社や大学との協働・連携を強化し、未来創造につながる新たな研究領域に着手することで革新的な商品の開発につなげていきたい。
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