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  • SDGs達成へ注目技術 新興が起こすプロセス革新
  • 2023年10月24日
    • つばめBHBはまずは20年代、肥料や化学品向けの小・中型アンモニア合成設備の受注獲得を目指す(川崎のパイロットプラント設備)
      つばめBHBはまずは20年代、肥料や化学品向けの小・中型アンモニア合成設備の受注獲得を目指す(川崎のパイロットプラント設備)
     <明日をつなぐ SDGs達成へ注目技術/2 バイオ・新生産技術/下>

     日本政府は2030年に最先端のバイオエコノミー社会の実現を目指すバイオ戦略を掲げており、バイオものづくりの産業育成に今年度から10年かけて約3000億円を投入する。50年のカーボンニュートラル実現を見据え、化石資源由来の従来の製造プロセスを置き換える新技術にも「グリーンイノベーション(GI)基金事業」を通じて支援する。こうした産業変革をベンチャーが担い、日本の競争力を底上げする。

     バイオものづくりでは、微生物発酵による物質生産の製造受託企業(ファウンドリ)の育成が進んでおり、東京大学発のグリーン・アース・インスティテュート(GEI、東京都文京区)と、神戸大発のバッカス・バイオイノベーション(神戸市中央区)が双璧をなす。

     GEIは新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託を受け実証推進拠点「バイオファウンドリ研究所」を稼働させた。三井化学の茂原分工場内(千葉県茂原市)に位置し、企業や大学、研究機関が開発した有用な生産菌株の商用生産を想定し、最大3000リットルの発酵槽で検証できる。

     米ギンコ・バイオワークスなどライバル企業が医薬品や高機能素材をターゲットに置くなか、GEIはバイオ燃料や代替たんぱく質、パーム油残渣といった重厚長大型ビジネスを中心に据える。伊原智人社長はプラットフォーマーの地位を確立するには「市場規模の拡大が見込め、蓄積した技術が他分野にも横展開できる事業を育成するのが近道」と話す。

     バッカスは二酸化炭素(CO2)を原料に生分解性ポリマーの量産技術を目指すGI基金事業に先ごろ採択され、この一環で、神戸市内の拠点などで研究エリアを23年度に約2倍に拡張してスマートセル(微生物)開発の能力を高める。同社の服部亮取締役は、市場の立ち上がりを捉えて一気に先行することが成長のカギとみて「ロケットスタートでどんどん進めていく」と意気込む。

     100年間変わらなかった化学産業にイノベーションを-。エネルギー多消費、CO2多量排出型とされてきた産業構造に風穴を開けると期待されるのもベンチャーの技術だ。

     電子レンジや通信分野で使われる電磁波で物質を直接、選択的に加熱して分解する技術の社会実装を目指すのがマイクロ波化学(大阪府吹田市)だ。現在は、ニッケルやリチウムなど「鉱物資源の製錬」、「ケミカルリサイクル(CR)」、水素やナフサ分解などの「ガス分野」を対象に省エネ、CO2排出の大幅削減に資する技術開発に努めている。CRでは全国に1000台の小型装置を展開し、「地産地消の資源循環モデルの確立に貢献したい」(吉野巌社長)との構想も描く。

     つばめBHB(横浜市)はアンモニアの地産地消を掲げ、100年前に開発された高温高圧の「ハーバー・ボッシュ法」から、触媒によって低温・低圧でも効率的にアンモニアを合成する技術の普及を目指す。同社は当面、肥料や化学品製造など中心に環境低負荷や小規模生産を強みとした500~数万トンの「小・中型」設備で受注実績を重ね、30年以降はアンモニア燃料や水素キャリアなどエネルギー向けの「大型」需要を取り込んでいく考え。中村公治社長は「環境や食糧問題に係る人類課題を解決する技術だ」と胸を張る。
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