• CAFBLOを用いた応接セット
      CAFBLOを用いた応接セット
     <注目製品解剖>

     ダイセルは今年8月、酢酸セルロース樹脂の基幹ブランドをリニューアルした。これまで樹脂化した製品は「セルブレンEC」などのシリーズ名で展開してきたが、2020年に立ち上げた高生分解性酢酸セルロース「CAFBLO(キャフブロ)」と統合。樹脂の所管も子会社のダイセルミライズからダイセル本体へと移し、新生・キャフブロがスタートを切った。直近では成形手法の拡大が新機軸を生み出しつつあり、このほど熱溶融積層(FDM)方式の3Dプリンティング(3DP)に対応。プリンターメーカーなどとの協業を通じ、高級家具といった大型造形品の商品化に乗り出す。

     プラスチック資源循環促進法の施行から1年半-。キャフブロは環境性能から注目を集める機会が増えた。広島県との協業プロジェクトではカトラリーやアメニティ製品向けの採用が促され、使用後の回収を経てカキ養殖パイプへと再生する実証実験がスタート。熱履歴への耐性から繰り返しのマテリアルリサイクルが可能で、仮にパイプとなった後に海洋流出しても環境汚染を防げるという「リサイクル適性×海洋生分解」の特性を持つ。

     生分解性を問わない用途では、すでにめがねフレームなどに多用されてきたが、ここに来て新たな高付加価値用途への道筋が見え始めた。プリンターメーカーのエス.ラボ(京都市)などの協力を得て大型品の3DP造形に成功し、高級家具としてまもなく販売店から上市される見込みという。

     3DP向けは従来もフィラメント形式で実用化していたが、ここにはあるハードルがあった。プリンターの吐出口が細いために酢酸セルロース樹脂がすぐに冷え、積層した層間の接合性が弱くなりがち。小型の造形物以外には適用が難しかった。

     そこでダイセルは協業を通じ、樹脂ペレットをそのまま使えるFDMプリンターによる造形に挑戦。ノズルが6ミリメートル径と太いために冷却速度の問題が解消された。また複数のノズルから異なる色の溶融樹脂を吐出できるため、「高意匠かつ大型」の造形が可能となった。

     今後は応接セットやランプシェードの商品化が有力だ。切子細工のような意匠と相まって、その外観はまるでガラスのよう。ここでは比重1・27の重厚感や肌触りの良さも生きるが、家具としての強度も両立。アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂に近い機械強度を実現したという。試作段階でも「北米・中国・中東などの富裕層から引き合いがある」(同社)といい、高級インテリアとしての新展開が期待される。
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