• 日本製分析機器を取りそろえる
      日本製分析機器を取りそろえる
     <拠点ルポ>

     【蘇州(江蘇省)=中村幸岳】専門商社の蝶理が中国・蘇州で運営する分析センターは今年5月、設立10周年を迎えた。中国産化学品の日本向け輸出が増えるなか、同センターは蝶理グループや同社顧客が取り扱う中国品サンプル分析の期間短縮などで顧客ニーズに応え、実績を積み重ねてきた。とくにユニークなのは、現地工場の生産プロセス改良や、中国企業への技術指導も主要業務として担うこと。商社ならではのきめ細かいサービスで案件受注を伸ばしている。

     現地法人の蝶理(蘇州)材料科技が運営する分析センターは2013年、本社ファインケミカル部による日本顧客向け営業活動をサポートする拠点として発足した。蝶理化学品本部唯一の技術センターであり、日本製の各種分析機器を多くそろえている。

     <最短で即日提供>

     分析センターでは顧客と契約を結んだうえでサンプルを分析し、顧客の出荷判定を支援。中国品を中国国内で分析するため、日本に送る場合に比べ分析に要する期間の短縮やコスト削減を実現でき、顧客のメリットは大きい。サンプルが届き次第、最短で即日の分析結果提供も可能という。

     専門商社が中国に分析拠点を置くケースはまれ。顧客(日本の分析依頼主)の規格で分析を行うことや、秘密保持契約を結びメーカーへの規格漏えいを防ぐ点、日本式の品質管理体制などが評価され、分析依頼を伸ばしている。

    • 赤木総経理
      赤木総経理
     中国駐在歴10年以上におよぶ蝶理(蘇州)材料科技の赤木伸生総経理は「商材のリスク評価に加え、現地製造拠点の技術改善などにも関わることで、商社事業の付加価値を高めていきたい」と話す。例えば中国品のサンプルに異物混入などがある場合、センターでの異物特定に止まらず、実際にスタッフが生産工場に赴き、生産プロセスなどでの異物混入原因を特定。メーカーに対してプロセス・品質改良などの指導を行う。

     赤木総経理によると最近は電子材料関係の顧客から、化学品の元素含有規格に適合するため、より低いPPBおよびPPMレベルでの分析要請が増加。また20年に日本でHACCP(危害要因分析重要管理点)に基づく衛生管理が義務化されたことにともない、食品添加物の分析依頼も増えているという。

     さらには蝶理グループがグローバルに商材調達先を広げるなか、中国品に加えインドや韓国などで生産された化学品の分析も手掛けるようになった。

     分析センターはこうした要請に応えて継続的に分析装置の拡充を図っており、今年はSEM(走査型電子顕微鏡)-EDX(エネルギー分散型蛍光エックス線分析)装置のほかガス、イオンおよび液体の各クロマトグラフィー用装置を増設する予定だ。

     <技術継承を重視>

     観光地として有名な蘇州は中国指折りの産業集積地でもあり、日系企業は約600社が拠点を置く。同市には全国から就職を希望する大卒者が集まり、市側もシェアハウスを設けるなど人材確保に力を入れる。蘇州分析センターで実務を担うスタッフは9人。地の利を生かし、優秀な人材をリクルーティングしている。

     蝶理グループは専門商社として高い専門性、機能性を看板に掲げており、蘇州分析センターはその営業活動や顧客支援の円滑化・迅速化、業務リスク低減などをサポートする極めて重要な存在。グループの若手営業担当者や駐在員に対し、品質管理や商材の見極めなどに必要な専門知識の研修も行っている。

     業務の幅広さゆえに、同センターのスタッフには分析・品質管理技術に加え、工場プロセス改善に必要な現場感覚、生産設備などに関する幅広い知識など総合的な技能が求められる。「メーカーのEHS(環境、衛生、安全)管理の状況をチェックするうえで、化学物質管理関連法についての理解も欠かせない」(赤木総経理)。若いスタッフが多いため技術の向上・継承を重視し、サービスに磨きをかける。
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