• ダイセルはイオン液体を用いた分離膜による大気中CO2の分離・回収技術の開発を進める
      ダイセルはイオン液体を用いた分離膜による大気中CO2の分離・回収技術の開発を進める
     <明日をつなぐ SDGs達成へ注目技術/3 CO2分離・回収/上(その2)>

    【「SDGs達成へ注目技術 カーボンネガティブ切り札」から続く】

     二酸化炭素(CO2)の膜分離技術は圧力差によってCO2を透過・分離する手法。分離材料に化学吸収や物理吸着させた回収方法が多量のエネルギーを消費する課題を抱えるなか、原理的に熱エネルギーを必要としない膜分離の強みに着目して社会実装を目指す動きが相次ぐ。

     ダイセルは産業技術総合研究所の協力の下、高分子/無機材料のハイブリッド方式によるCO2分離・回収膜の開発に挑む。促進輸送膜の一種で、多孔質膜上にセラミックス材料による層を形成し、化学吸収/物理吸収の役割を果たす2種のイオン液体を層内に含浸させるのが技術の要だ。リチウムイオン2次電池(LiB)用セパレーターから着想を得ており、当初はポリエチレン基材に機能層を形成した「平膜」形態での実用化を目指していた。高い気密性が必要なモジュールとしての要件を満たすため、開発の焦点を「中空糸膜」へとシフトし、足元ではコンセプトをそのままに糸の内部へ機能層を形成するプロセス開発が進む。

     0・04%と大気中同等のCO2濃度から高い選択率で分離・回収できる性能を確認し、CO2直接回収法(DAC)の要素技術としての実装を見込む。大型DAC装置は圧力スイング吸着法(PSA)といった物理吸着などが主流だが、「CO2の濃度差だけで作用する膜分離は前処理工程などとしての組み込みも期待され、回収効率で優位性を発揮できる」(同社)。

     UBEが手がけるのは自社の耐熱ポリイミド(PI)を用いた中空糸膜。足元で注力するのがバイオガス向け市場で、中空糸に通すとCO2が細孔から抜け、残ったバイオメタンを濃縮できる。膜モジュールを増やすだけで容易に回収能力を増やせることなどから市場が拡大する欧米で引き合いが強まる。バイオメタン向けの23年度の売上高は21年度比3・5倍を計画する。

     旺盛な需要に応え、宇部ケミカル工場でガス分離膜用PI中空糸製造設備、堺工場でガス分離膜モジュール製造設備の増設も決めた。市場ではPSAと競合する部分もあるが「膜の方がコンパクトで使いやすい」(永田啓一機能品事業部長)と自信をのぞかせる。

     日東電工はボイラーで液化天然ガス(LNG)を燃焼する際に発生する排ガスからCO2と窒素を分離する高分子膜を開発している。メタンなどと異なり、窒素はCO2と分子サイズが同じであることから、溶解拡散など分子ふるい以外の方法を主体とする。スパイラル型モジュールを適用し、ロール・トゥ・ロール工法で支持体やガス分離層などを多層化して形成するのも特徴だ。

     21年度に直径2インチ、長さ300ミリメートルのミニエレメントを完成させ、今年3月には世界初となる実用化されているボイラーを用いた実証試験を滋賀事業所(滋賀県草津市)で開始した。直径8インチ、長さ1メートルのエレメント19本を用いたパイロット機で年300トンのCO2を回収する。実験は23年度中に完了予定で、豊橋事業所(愛知県豊橋市)を候補に25年度にも実機を導入し、同3000トンの回収を目指す。井原輝一サステナブル技術研究センター長は「先行して実績化されている化学吸着に対し、分離膜での回収技術はこれから。化学吸着や物理吸着では導入が難しかった中小規模の排出ガス源が有力候補になる」と話す。
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