• 住友化学などが開発を進める「溶解拡散膜」。膜を積み重ねる「プレート&フレーム型」を採用
      住友化学などが開発を進める「溶解拡散膜」。膜を積み重ねる「プレート&フレーム型」を採用
     <明日をつなぐ SDGs達成へ注目技術/4 CO2分離・回収/下>

     二酸化炭素(CO2)の分離・回収技術は天然ガス精製など高圧、高濃度の排ガスを対象とした大規模プロジェクトが先行する一方、低圧・低濃度の排ガス向け技術開発にはコストをはじめ解決すべき多くの課題が残されている。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2022年5月、総額2兆円のグリーンイノベーション(GI)基金において、工場などからの排ガスに対応した技術開発計画に着手。CO2を化学品原料に生かす回収・貯留・有効利用(CCUS)の観点からも、早期の社会実装が期待される。

     GI基金では30年度までの10年間に総額382億円の予算を投じ、濃度10%以下の低圧・低濃度排気ガスを対象に低コスト、低エネルギー技術の開発を進める。30年にCO21トン当たりで2000円台以下のコストが目標だ。天然ガス火力からの排ガスでは千代田化工建設とJERA、地球環境産業技術研究機構(RITE)がアミン担持固体吸収材を用いた国産技術の開発に取り組んでいる。

     工場排ガスについては、住友化学が京都大学発ベンチャーのOOYOO(ウーユー、京都市)と分離膜を用いた分離・回収システムの開発を進める。採用したのは「溶解拡散膜」。CO2を移動させるキャリアを用いないのが特徴で、CO2が窒素など他の気体よりも膜に溶解し、拡散する速度が速い「時間差」を利用して選択的に透過させる手法だ。

     膜自体の開発はウーユーが担い、住友化学は膜の知見を生かしてモジュール化する。膜を積み重ねる「プレート&フレーム型」を選択し、中心にガスを流して上下2枚の分離膜でCO2を回収。エレメント化時の機械的ダメージが少ないため薄膜に対応し、かつ排ガスは低圧のため圧力損失が小さくてすむ。

     25年3月のステージゲートを控え、まずは3000円に近い回収コストの達成を目標とする。スケールアップ期間を経て27~28年度に日量10トンの実証設備を自社内に設けて、コストを2000円に近づける。現時点では32年の事業化予定だ。

     レゾナックと日本製鉄が開発に取り組むのが新規吸着剤「構造柔軟型PCP(多孔性配位高分子)」。金属有機構造体(MOF)とも呼ばれる手法で、金属と有機化合物からなる3次元構造が特徴だ。化学吸着や極性を利用するゼオライトはCO2の脱着に大きなエネルギーを要し、CO2が低濃度であるほど回収・濃縮には高いエネルギーを必要とする。PCPは最も弱い分子間力でCO2に作用し、CO2の吸着で安定した複合体を形成する。そのため低圧で吸着でき、脱着のエネルギーも小さい。理論上はゼオライトの半分のエネルギーですむという。

     24年度までに技術を確立し、27年度末のステージゲートに向け25年度以降、量産検討を進める。パイロット設備はレゾナックの大分コンビナート、日鉄の九州製鉄所の双方に建設。並行して圧力変動吸着(PSA)装置を用いたプロセス開発も進めており、29年度に両社拠点で日量10トンのパイロット設備を稼働させる。

     住友化学、レゾナックともに、将来的には化学品を生産するカーボンリサイクルにコスト競争力あるCO2の供給を狙う。住友化学は回収したCO2とグリーン水素からメタノール製造などにつなげたい考え。レゾナックは化学品製造の実証設備を29年度に整備する計画で、高濃度に濃縮したCO2をガス状態で運用する構想を描く。
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