• バイオスティミュラント製品を散布している様子(住友化学提供)
      バイオスティミュラント製品を散布している様子(住友化学提供)
     <明日をつなぐ SDGs達成へ注目技術/6 環境配慮型の農業資材/下>

     高温や乾燥、豪雨など異常気象が猛威を振るい、農作物に甚大な影響を与えている。日本の今年の夏の平均気温は、1898年に統計が始まって以降、過去最高を記録し、米の粒が白く濁る白未熟が発生したり、ネギなどの野菜が成長しないといった被害が相次いだ。

     世界の気象がどんどん過酷になり耕作地も減少するなかで、増え続ける人口を支える食糧増産を果たさなければならない。しかも、世界の農業政策は化学農薬や化学肥料を大幅に削減する方向にある。

     解決策の一つが、「バイオスティミュラント」と呼ぶ新ジャンルの農業資材。農薬は害虫や雑草といった生物的ストレスに対抗するのに対し、バイオスティミュラントは環境などの非生物的ストレスへの耐性を高める役割がある。

     たとえば、光合成や開花・着色を促したり、根張りを良くして栄養吸収力を高める。環境ストレスの影響によって抑えられていた、植物が本来持つ力を引き出して品質や収量を向上させる。天然有機物から抽出される腐植物質や海藻抽出物、アミノ酸・ペプチド、菌根菌などの微生物資材を使っており、環境配慮型の物質である点も注目される背景にある。

     世界の市場規模は現在およそ30億ドルとまだ小さいものの、2030年までに100億ドルを突破する勢いで成長する。欧米のスタートアップや肥料会社が手がけるケースが多いが、主要プレイヤーはいまだ固まっていないブルーオーシャンだ。ただし、法的ルールが整っていない国が多く、効果の裏付けのない商品も出回る。科学的データを積み上げ、農家に確かな情報を伝えて普及・定着できるかが市場形成のカギになる。

     日本企業でバイオスティミュラント市場への進出が早かったのは味の素だ。アミノ酸由来の製品を手がけるスペインの農業資材会社アグロ2アグリ(A2A、バレンシア)の過半数株式を17年に取得し、昨年度には完全子会社にした。A2Aとは、主力のアミノ酸製品の製造過程で副産物として出るアミノ酸を含む発酵母液を供給する関係にあり、原料からバイオスティミュラント製品に事業領域を広げたかたちだ。

     「医薬品レベルの分析・評価を行い、科学的な有用性を示せるのがA2Aの強みだ」と、アミノサイエンス事業本部バイオファーマサービス部長の大竹康之執行理事は話す。米コルテバをはじめ多くの農薬大手と共同開発に取り組んでいると言い、原料や製品を供給するBtoB型の事業として育てていく。

     住友化学は今年、作物の生育を改善するフルボ酸などの腐食物質を手がける米FBサイエンスを買収して本格参入した。国際アグロ事業部の生嶋伸介常務執行役員は「研究開発水準が高く、ユニークな商品で世の中の役に立てる」と買収意義を説明する。住友化学は15年に米国企業を買収し、土壌中の有用微生物である菌根菌事業を手に入れた。世界販売網を使って腐食物質と菌根菌をセットで販売できるようになるほか、M&A(合併・買収)を活用してさらなる製品拡大も目指す。

     フルボ酸の国内シェアをほぼ独占するデンカは成長事業へと引き上げるために、欧米や南米、アジアに販売網を確立していく。アミノ酸を用いた新製品を計画するなど品揃えも増やし、農業関連事業の柱に育成する。国内農薬最大手の日産化学はグループの肥料メーカー、日本肥糧(群馬県)やサンアグロ(東京都)が持つバイオスティミュラント製品のグローバル展開に乗り出す。
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