• フードロス削減に貢献する住友ベークライトのスキンパック包装
      フードロス削減に貢献する住友ベークライトのスキンパック包装
     <明日をつなぐ SDGs達成へ注目技術/7 フードロス削減素材>

     持続可能な社会を考えるうえで、フードロスの削減は避けて通れないテーマの一つだ。販売される品数が増え、店頭での売れ残りや消費・賞味期限前の返品などにより、まだ食べられる食品が多く廃棄されている。世界共通の喫緊の課題に対し、化学各社も独自の視点で食品の長期保存や鮮度維持に役立つ素材技術の提案に力を入れている。

     トレーや台紙上の食品に熱で軟化する酸素バリア性を備えた特殊フィルムをかぶせ、真空密封させる「スキンパック包装」で精肉向けを中心に採用事例を増やすのが住友ベークライトだ。スキンパック包装は優れた食品保存技術として欧州では広く普及しているが、日本でもSDGs(持続可能な開発目標)の観点などから広がり始めている。

     人手不足や人件費の高騰により、スーパーなどの店舗内で生鮮食品を加工・包装する形態からプロセスセンターを活用するアウトパック加工が広がっている。パックした精肉を店頭に並べるまでに時間を要するため、鮮度保持のニーズは高まるばかりだ。

     1976年から食品用包装フィルム・シート事業を手がける住友ベークライトでは、早くから消費期限延長によるフードロス削減の観点に着目し、日本で初めてスキンパック包装用バリアフィルムの開発に成功。2019年に「おいしさスキン」の名称で商標登録も取得した。

     大気中の酸素を遮断して酸化を防ぐほか、隙間なく密着することでドリップが軽減されて菌の増殖を抑え、肉の消費期限が延ばせる。スキンパック包装で肉が熟成され、うま味が増す利点もある。開発に当たってとくに苦労したのが、内容物の形をつぶさずにフィルムの伸びと追従性を上げる設計だという。

     一般のフィルムであれば真空を引くと内容物を潰してしまい、逆に伸びがいい素材だとシワになってしまう。そこで、独自の架橋技術などを導入してゴム弾性効果を発現させ、優れた伸びと収縮性を兼ね備えた高追従性のあるフィルムの実現にこぎ着けた。

     世界的な環境意識の高まりを受け、バリア機能だけにとどまらずリサイクル性にも配慮した製品の需要が増している。一方、耐熱性や加工適性など多様な性能が要求される食品包装フィルムは、異なる特徴を持った複数の素材を貼り合わせて設計されることが一般的。それらを分離するのが困難なためリサイクルしにくいという課題があった。

     こうしたなか東洋紡は、バリア性能に優れる透明蒸着フィルム「エコシアール」シリーズから、初のオレフィン系素材を使用した二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム「同VP001」を開発。オレフィン系素材のみで構成されるモノマテリアル包装材の実現に向けた注力品と位置づけ、今年末のサンプル提案を計画している。

     VP001は、専用の高耐熱OPPフィルムに独自の蒸着加工を施した包装用ハイバリアフィルム。酸素ガスや水蒸気に対する高いバリア性能を備え、食品の鮮度を維持、消費・賞味期限を延長できるなどフードロスの低減を見込む。OPPフィルムでは困難とされてきた高い耐熱性とバリア性の両立を実現した。

     VP001について、星野信行執行役員パッケージング事業総括部長は「オレフィン系素材のみで構成されるモノマテリアルの包装材の実現に向けた提案につなげたい」と話す。今後も環境に配慮した高機能なフィルム製品ラインアップを拡充し、循環型経済への貢献を強めていく。

    (化学週間連載取材班が担当しました)(おわり)
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