マレーシアに後工程工場を有するマイクロン・テクノロジーは「セミコン・東南アジア」でブースを構えた
<半導体産業 変革目指すマレーシア/1>
半世紀を超える歴史を持つマレーシアの半導体産業が、次の50年の飛躍に向けた土台作りに取りかかった。先月末にクアラルンプールで開かれた展示会「セミコン・東南アジア」でアンワル・イブラヒム首相が示した新たな振興策には、「後工程の集積地」からの脱却という大胆さと、自国の企業・人材の育成へ真正面から挑む姿勢を反映した具体策が並ぶ。一方で、関連する部材・化学品ではまだ東アジアやシンガポールに付随する市場として位置付けられているのが実情。同首相が高度化の足掛かりとして重視する「先端パッケージング」が花開けば、材料や装置の市場として存在感が高まる可能性がある。
<“資産”を更新>
アンワル首相が提示した「国家半導体戦略(NSS)」では、3つに分けたステップアップの工程の第1段階で先端パッケージングへの注力を掲げている。現在マレーシアの半導体産業の主軸は後工程に当たる組み立てとテスト(OSAT)で、台湾の日月光半導体製造(ASE)、米テキサス・インスツルメンツなどの大手が工場を置く。マレーシア半導体産業協会(MSIA)によると、世界の後工程能力の13%を占めるまで集積が進んでおり、国内に抱える“資産”を先端技術へ更新させることが新戦略の狙いだ。
先行する動きもある。マレーシアの半導体産業に先鞭を付けるかたちで1972年に進出した米インテルは現在、半導体関連工場が集まるペナンで先端パッケージングの工場を建設している。同社は21年に、10年間で300億リンギット(当時の為替換算で約8100億円)をマレーシア事業に投資すると発表しており、後工程の重要拠点と位置付けている。
部材関連では、オーストリアのプリント基板大手AT&Sが今年1月、人工知能(AI)やデータセンターなどに使われる次世代チップ向けパッケージ基板の新工場を開所した。マレーシアに中国企業との合弁拠点を有する米アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)へ供給するという。
こうした動きに期待するのが、今回の展示会に出展した独化学大手ヘンケル。封止材やアンダーフィル材などを手がけ、先端パッケージング用は中国、韓国、米国で生産している。同社のスエン・チーシャンディレクターは「インテルやマイクロン(・テクノロジー)の新工場に対応できるようにしている」と話す。
<日系も虎視眈々>
展示会に出展した日本企業も先端パッケージングの需要を虎視眈々と狙っている。フラックス洗浄剤やドライフィルム剥離剤などを展開する花王は、もともと先端パッケージング分野に照準を合わせている企業だ。マレーシアで先端パッケージングを行う企業が増えれば、従来の強みを発揮できる機会が増える。「マレーシアは日韓台の先端パッケージングと少し異なるため、現地向けに材料をチューニングする必要がある」(花王シンガポールの山川正多マネジャー)と独自の視点から販売戦略を練っている。
先端技術に使われる部材・化学品は日本企業の得意分野で、マレーシアでの商機は広がりつつある。世界各地で「セミコン」を冠する展示会を主催し、業界支援も行っている国際半導体製造装置材料協会(SEMI)のアジット・マノチャ会長兼CEOは「(東日本大震災時に)日本に津波が来たとき私はグローバルファウンドリーズのCEOで、日本から材料が手に入らないとパニックになった。そのため、1国だけ(の生産)に依存していていいのかという強い警鐘を鳴らしている」と話し、日本勢に海外生産の拡大を呼びかける。
半導体製造装置メーカーの商機も広がりそうだ。前工程から後工程に至る各種装置を供給する米ラムリサーチは、マレーシアに工場を持つ唯一の世界大手。しかも、工場はグループ内で最新かつ最大だ。「先端パッケージング向けを狙っているので、首相の発言はありがたい」(展示ブース担当者)と新政策を歓迎する。
マレーシア政府は先端パッケージングについて、引き続き外国直接投資(FDI)の誘致を推し進める構えだが、一方で、パッケージング分野で自国企業を先端領域に導く青写真も描く。背景にあるのは着実に進むパッケージングの進化への危機感だ。MSIAのワン・シュウハイ会長は「今後5年間で新しいパッケージング技術に移行しなければ、マレーシア企業は(世界から)遅れを取ってしまう」と話す。先進的な設備や素材の利用、工場のスマート化や自動化を強化して、「グローバル・チャンピオン」を目指すという。
(次回は19日付10面に掲載予定)