• AGCは微細孔付きのガラス基板を「セミコンジャパン2023」でデモした
      AGCは微細孔付きのガラス基板を「セミコンジャパン2023」でデモした
     <巨大化する半導体 注目のガラス基板/上>

     半導体業界でガラス基板パッケージへの取り組みが活発化している。とくに意欲的なのは半導体受託生産業界で、米インテルが昨秋、導入計画を発表したのを機に韓国サムスン電子や台湾TSMCの動きも激しくなった。半導体市場を牽引するAI(人工知能)チップは多くの異種半導体を実装するだけに高性能化とダイサイズの大型化が比例する。生産性が劣る口径300ミリメートルシリコン基板での量産は数年後に限界を迎え、その数倍以上もの実装面積があるガラス基板が台頭するとみられる。大容量の光伝送との相性もよいのがガラス基板の特徴だ。米商務省はチップス法による支援を初めてガラス基板メーカーに実施することを決めたが、これはガラスの将来性を高く評価してのことだ。米国に比べて新技術に慎重な日本でもガラス基板を数十層も多層化する独自の高密度実装技術が開発され、注目を集めている。「微細な孔開け技術が最大の課題」とされるガラス基板、今後の動向が注目される。

     次世代半導体の競争力を高めると期待されるガラス基板だが、最初の取り組みは10年以上前、米ジョージア工科大学で始まった。当時から大容量の広帯域メモリ(HBM)の実装用途に考えられていたが、結局普及にはいたらなかった。液晶表示装置(LCD)向けの大型ガラス基板が使え、平坦度が高く、反りにくい。そのうえ耐熱性や信号の伝送特性も優れると利点は多いが、割れやすさとコストでシリコンを覆すことができなかった。

     シリコン製の中継基板であるインターポーザーは大型化してコストも下がってきたが、ガラスは孔開け工程での割れ(マイクロクラック)の解決が難航し、周辺技術も揃わなかった。

     しかし昨年、インテルのパット・ゲルシンガーCEOが、「2020年代後半にはガラス基板で量産を始める」と発表したのを機に再びガラス基板が注目されるようになった。かつてゲルシンカーCEO自らがガラス基板の研究に取り組んでいただけに思い入れも深い。

     半導体受託生産最大手のTSMCは、口径300ミリメートルシリコンウエハーを使う高性能コンピューター(HPC)向けパッケージである「CoWoS」(チップ・オン・ウエハー・オン・サブストレート)の供給能力が不足している。そこで515×510ミリメートルガラス基板を使う生産性が高いファンアウト型パネルレベルパッケージ(FOPLP)の導入を検討中と、現地で報道されている。

     台湾ではインテル向けの需要を見越して工業技術研究院(ITRI)がガラス基板の事業化に率先して取り組んできた。昨年には太陽ホールディングスとエバーライトケミカル、それに液晶パネル大手の群創光電(イノラックス)の共同開発成果を「セミコン台湾」で披露した。第3・5世代ガラス基板を使うなど、大型化で先行している。

     グループにフラットディスプレイパネル(FDP)大手を持つサムスン電子はFOPLPへの対応が比較的容易で、インテルに先駆けての量産適用を目指す。ただ韓国で注目すべきはSKグループの化学大手であるSKCの子会社、米アブソリックス(Abosolics ジョージア州)。SKハイニックスはHBMのトップメーカーとして急成長中だが、ガラス基板でもSKグループが世界をリードしている。

     米商務省は5月、アブソリックスが米ジョージア州アトランタに建設するガラス基板工場に対し、半導体産業を支援するチップス法に基づき7500万ドルの助成を行うと発表した。半導体部材がチップス法の対象になるのは初めて。インテルが打ち上げたガラス基板導入計画とぴったり足並みを揃えた格好である。
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