<グリーン・アース・インスティテュート 伊原智人CEOに聞く/上>
バイオものづくりのプラットフォーマーとして国内で唯一、上場しているグリーン・アース・インスティテュート(GEI)。微生物を活用したものづくりのビジネス化に取り組むかたわら、このほど新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のバイオものづくり革命推進事業の第2回公募に第1回公募に続き採択されるなど、数多くの国プロにも関与している。黎明期の市場はフロントランナーの目に、どのように映っているのか。これまでの取り組みを振り返ってもらいながら、出口としての持続可能な航空燃料(SAF)の伸びへの期待、製紙産業との親和性など、バイオものづくり産業の課題と未来について、伊原智人代表取締役最高経営責任者(CEO)に聞いた。(佐藤尚道)
◆バイオものづくりの“上市屋”◆
経済産業省は、この業界が水平分業化していくとみている。その見方のなかで、当社は設計・プラットフォームのレイヤーで、一種の“バイオものづくりの上市屋”として、ユーザーに頼まれて社会実装までもって行く役割を担っている。
設立は2011年で、地球環境産業技術研究機構(RITE)で開発していたバイオリファイナリー技術の商用化を目的にスタートした。従業員約60人のうち約50人が千葉県の木更津と茂原の2カ所の研究所で勤務している。
研究員は、とくに21年の上場後は大企業からも採用できている。アカデミア出身のポスドク経験者もいる。分子生物学から有機合成、エンジニアリングまで多くの分野の専門家がいることが強みで、多種多様なバイオマスを原料としてアミノ酸やバイオ燃料、高付加価値品も含め、グリーン化学品なら何でもやっている。現在は、RITEの技術に加え、自社技術の蓄積も進んでいる。
古着から製造したジェット燃料を国内で初めて実用化(JEPLAN提供)
◆研究開発受託だけでは食べていけない◆
ユーザーから受ける相談は、いい菌体を開発したものの、その後のプロセスの最適化、スケールアップ(大量培養)のやり方がわからないというものもあれば、菌や発酵の知見はないが、バイオで何かを作りたいというものまで、さまざまだ。ただ、半導体のような巨大産業であれば研究開発受託だけでも食っていけるが、現在のバイオものづくり市場の規模を考えると、研究開発受託だけで食べていける状況にはなっていない。
設立以来、売り上げはほぼゼロの状況が7年続き、“魔の川”“死の谷”をのぞき込んできた。最初の3年くらいはアメリカでバイオエタノールのライセンスに力を入れていた。当時はバイオエタノールへの注目が高まりトウモロコシの需要も急伸、高騰し、非可食原料に関心が高まり始めていた。
だが、原油価格の下落により燃料価格も下がったため、提案先のバイオエタノールプロジェクトが軒並み凍結した。当社はそれでアミノ酸に舵を切ったが、それが18年9月期にRITEが開発したアミノ酸の生産技術を中国企業にライセンスすることにつながった。
これが弾みとなり、多くの企業からお声がけをいただくようになった。売り上げは右肩上がりで推移し、21年12月に上場した。ただ現状の売上高は10億円程度で、市場が黎明期ということもあり、事業は国プロの比率が高い。利益を上げられるようになるためには、事業規模をもっと大きくしていく必要がある。
このため、ファブレスとしてライセンスビジネスをはじめ、委託生産による自社製品の販売、パイロットレベルまでの設備導入までを含めたパッケージ提案の事業に力を入れている。
古着から製造したジェット燃料を国内で初めて実用化(JEPLAN提供)
◆国内初、航空燃料で実績化◆
国プロ以外に、これまで手がけた開発例はさまざまだ。アミノ酸の一種のアスパラギン酸の製造では、グルコースを原料とするだけでなく、炭酸を吸収させることで高効率に生産できるコリネ菌を当社の研究員が開発した。生産性向上により化粧品や食品向けだけでなく、生分解性のある高吸水性樹脂用途への展開も期待できる。
ポプラ由来のエタノールを化粧品向けに供給した実績もある。また、米と麹菌からマイコプロテインという高たんぱくな食材の事業化も進めている。鶏肉のような歯ごたえがあり、穀物由来の新しいたんぱく源として市場開拓を行っている。
銀行などから回収したシュレッダーごみを発酵させてエタノール、そのエタノールから消毒用製品も作った。製品はシュレッダーごみを出した企業に購入してもらった。
古着の綿を原料として、イソブタノールというアルコールからジェット燃料をつくった。このジェット燃料は21年に国内で初めて、羽田発、福岡行きのJAL(日本航空)便に採用された。
このプロジェクトは一回きりで、それというのも既存設備で製造するコンセプトだったので、回収した古着を微生物が食べられる糖液にしてイソブタノールを製造し、化学反応で炭化水素油に変換し、それを精製して既存のジェット燃料と混合する場所が全国に散らばっていた。このため、輸送にともなうコストや二酸化炭素(CO2)排出の課題もあり、事業性の意味では難しいところがあった。ただ、技術的には実現可能ということは証明できた。(つづく)