<実用化迫る革新技術 「化学の日」週間連載/1>
「化学の日」の10月23日を含むきょう21日から27日は「化学週間」にあたる。カーボンニュートラル、生成AI(人工知能)をはじめとするデジタル進化、食糧問題など持続可能でより豊かな社会の実現に向けて化学への期待は一段と高まっている。今年の化学週間は、日本の化学・素材メーカーや関連企業が挑む革新技術の開発動向を追う。
社会全体でカーボンニュートラルや循環型経済の実現に向けた取り組みが広がるなか、石油化学業界では原燃料の化石資源を転換する取り組みが活発化している。原料転換では、廃プラスチックを原料にモノマーなど基礎化学品に再生するケミカルリサイクル(CR)の普及を図る。特定の樹脂を対象とするものから、混合プラ・複合プラをまとめて油化するものまで、さまざまな技術の開発や実証が進められており、2030年代にはCRが石化産業の構造を転換するゲームチェンジャーとなる可能性を秘める。
油化CRがその一つ。三菱ケミカルグループは、ENEOSと共同で茨城に廃プラ処理能力2万トンの油化設備を近く完工する予定。30年前後にスケールアップした大型プラントの稼働を目指す。一方、出光興産は25年度下期に千葉の事業所の隣接エリアで廃プラ処理量年間2万トン規模の1号機を稼働させる。30年度までに処理量で年数十万トンレベルを計画している。
三菱ケミカルグループが茨城事業所に建設中の廃プラ油化設備
得られる分解油を製油所で処理してマスバランス方式を適用すれば、リニューアブルな燃料油や化学品原料を製造できる。プラスチックの再生まで多段階を経るものの、小規模からの社会実装にも対応できる利点がある。
三井化学はCRで得る熱分解油をナフサ分解炉に投入する循環を構想する。今年3月には、CFP(広島県福山市)がCRで得た廃プラ熱分解油を大阪のナフサ分解炉に投入した。CFP、花王とCR事業化の検討も進めている。花王が関与した廃プラを原料に用いてCFPが熱分解油にし、三井化学がそれをナフサ分解炉に原料として投入しマスバランスを適用してオレフィンを製造、グループ会社が供給する。将来的に、市中から回収した廃プラの原料化も視野に入れる。
積水化学工業と住友化学は共同で、ごみ処理施設に収集された可燃性ごみから作るエタノールを経由してエチレン、ポリオレフィンへと展開する技術を開発中。22年に岩手県で可燃ごみからエタノールを製造する実証プラントを稼働している。
一方、住友化学は、廃プラから基礎化学品原料に循環する製造技術の開発に着手している。廃プラの直接分解でオレフィンを得るもので、ベンチ設備での技術実証で収率など目標値を達成した。データのさらなる蓄積と並行して、次のスケールアップに向けた検討を始めている。
プラからプラへの循環をより小さいループで実現できるモノマーリサイクルの実証も進む。工程数が少ない分、再生過程の環境負荷を低減できると期待される。ポリスチレンでは、PSジャパン(旭化成62・07%、出光興産37・93%出資)が23年8月に岡山の工場で原料処理能力年1000トンの実証設備を立ち上げた。30年までに商業化を目指す。デンカグループも今年3月、千葉に同3000トンのCR設備を完成させた。
アクリル樹脂(PMMA)のCRでは住友化学が先行する。愛媛の拠点で廃PMMAからMMAモノマー(メタクリル酸メチル)を製造する実証設備を設け、商業化に向け技術検証やマーケティング活動を進めている。すでに、ジュエリーに採用されるなど実績をあげている。また、三菱ケミカルグループは年間処理量3000トン規模のPMMAのCR設備を導入する予定。
事業化に向けて各社の技術開発が進展しているが、社会実装には克服しなければならない課題がいくつか横たわる。例えば、特定の樹脂のCRの場合では、安定して廃プラを確保し、再生品を供給する需要家の近くにプラントを立地する必要性が高まり、地産地消の色合いが濃くなるため、企業、行政や自治体が一体となって連携することも重要な施策となる。