レゾナックはエピ層技術に強みを持つ
<SiCウエハー最前線/上>
SiCウエハーの技術開発が熱を帯びてきた。製造方法は昇華法が一般的だが、大口径化しやすいとされる溶液法の実用化が間近に迫り、第3の製法として固相法の開発も進む。一方でコストダウンの別のアプローチとして注目を集めるのが貼り合わせSiCウエハー。多結晶SiCと単結晶SiCを組み合わせ、コストを抑える手法だ。日本勢が高いシェアを握るシリコンウエハー市場と異なり、SiCウエハー市場は欧米勢に加えて中国勢も参入し、成長市場をめぐって開発競争が繰り広げられている。
電気自動車(EV)の普及に欠かせないSiCパワー半導体。ワイドバンドギャップ半導体のSiCは、シリコン(Si)よりも耐熱性や耐圧性、放熱性に優れるのが特徴だ。EVの駆動用インバーターにSi代替でSiCを用いると、機器を小型化でき、航続距離も伸ばせる。SiCはSiと同じようにシリコン酸化膜(SiO2)を保護膜として利用でき、イオン注入でn型/p型半導体を形成できる。このようにSiデバイスの技術を横展開できるのもSiCが選ばれる理由だ。
<現状はSi優位>
ただ、現状のパワー半導体は大部分をSiが占める。富士経済によると、パワー半導体の2023年の市場規模は3兆1739億円で、そのうちSiが9割近く、SiCと窒化ガリウム(GaN)の化合物半導体は1割強にすぎなかった。高性能のSiCの普及を妨げる最大の課題はコストだ。
Siの場合、るつぼ内のシリコン液中で種結晶シリコン棒を回転させながら引き上げることで単結晶インゴットが製造される。一方、SiCはSiC原料を昇華させ、再結晶化させる昇華法が用いられる。高温プロセスかつ結晶成長に時間を要する。固相から気相へ急激に変化させるため、欠陥が生じやすく歩留まりにも影響する。こうしたなかコスト削減に向けて各社が取り組むのがウエハーの大口径化。生産効率を上げるべく、SiCウエハーの開発競争は6インチから8インチに移っている。
レゾナックはSiCエピウエハーの外販でトップシェアを握る。SiC業界はSiC基板、SiCエピウエハー、SiCデバイスの3領域に分かれ、レゾナックはSiC基板とSiCエピウエハーの2領域にまたがって事業を展開する。SiC基板は自社生産と外部調達を組み合わせ、基板にエピ層をつけたSiCエピウエハービジネスを手がける。SiCはカスタムメイド品であり、各社の仕様に合わせたSiCエピウエハーを供給する。
技術面ではエピ層で欠陥を無害化する技術に強みを持つ。8インチ品はすでに6インチ品同等の品質レベルに達しており「実用化に向けた最終段階に入った」(レゾナック)。SiC基板、エピ層の両方でさらなるコストダウンを図り、8インチ品の早期市場投入を目指す。
関西学院大学発ベンチャーのキュレダリサーチ(豊田通商と折半出資)も欠陥の無害化技術を持つ。非接触型の熱プロセス「ダイナミック・エイジング」技術でCMP(化学機械研磨)や一部のエピ成長プロセスを代替。非接触のため残留加工歪みが生じず、品質を向上できる。ライセンスビジネスで8インチ品への適用を目指す。
<海外勢と競争へ>
8インチ品で先行するのは海外勢だ。SiC基板からSiCデバイスまで一貫生産する米ウルフスピードは、いち早く8インチ品を実用化し、業界をリードする。米コヒレントも8インチ品を市場投入する予定だ。8インチ市場の拡大を見据え、インフィニオンやSTマイクロエレクトロニクスといったSiCデバイスメーカーは、8インチ対応の工場建設を相次ぎ発表。25年以降に8インチベースのSiCパワー半導体の供給量が大幅に増加する見通し。