国際化工展は国有・民間の化学大手が出展。製品による環境貢献をアピールした
<中国化学業界 緑色低碳に挑む/上>
【上海=中村幸岳】中国で「緑色低碳(グリーン・低二酸化炭素(CO2)排出)型化学品」の生産拡大に向けた動きが加速している。9月に開催された国際化工展(上海)でも、各社が「世界初」のバイオ製造技術や生産プロセスの省エネ・効率化を競った。
山東省の民営化学大手・京博控股(濱州市)は、化工展で世界初となるバイオベースのイタコン酸エステル系ゴム事業化をアピール。自動車部品などの軽量化に寄与する発泡ポリプロピレン、中国国産第一号となったPOE(ポリオレフィンエラストマー)なども展示した。
イタコン酸エステル系ゴムは、山東省で年産5000トンのプラント建設を進めている。ワラやトウモロコシの穂軸、キャッサバなど非可食植物を発酵させイタコン酸を得て、これをエステル化。ブタジエンやイソプレンと重合し、イタコン酸エステル系ゴムを製造する。
同社によると耐水性やグリップ性を生かし、靴のソールなどをターゲットに市場展開する計画。将来は自動車用タイヤ向けでも採用を目指す。
京博股份は昨年、子会社の貝欧億科技を通じ、濱州市(山東省)で年3万トンのPOEプラントを稼働。自動車や太陽光パネルの部品に使われ、中国が国産化を急ぐ同製品に先鞭をつけた。
すでに第2プラントに着工、華南地域でも投資を検討するなど60万トン体制の構築を目指す。貝欧億科技の担当者は化学工業日報の取材に対し「競争は激しいが、需要家などと連携し市場を創造していきたい」と意欲をみせる。
貝欧億はPOE10万トンの第2プラントを着工
同じく山東省民営の東明石化はポリオレフィンなどを出展。原料オレフィン生産の環境性を高める技術でも注目を集める。
同社は中国石油大学(華東)と共同で、触媒存在下で原油を熱分解し、直接オレフィンを得る「UPC技術」を開発。ナフサを分解してオレフィンを得る分解炉に比べ、エネルギー消費やCO2排出を2割以上削減できるという。
すでに試験設備1号基(オレフィン年産5万トン)は1年以上の安定稼働を継続。スケールアップした2号基も建設予定で、年間で原油100万トンをオレフィン30万トンに転換できる設計だ。
化工展に出展する企業は、化学品サプライチェーンの川上に位置したり、エネルギー多消費型である企業が多い。中国が2030年のカーボンピークアウトを目指すなか、こうした企業にとって省エネ・排出削減は喫緊の課題だが、東明石化のように製品やプロセスのグリーン化を進める一方で、規模拡大も継続している。
国営化学大手・上海華誼は、「緑色化工」をテーマに太陽光発電パネル用のフッ素系塗料や省エネタイヤなどを出展。同社は多くの展示会で顧客の環境負荷低減をサポートする姿勢をアピールする一方、大規模な増産投資も進行させている。
担当者は「詳細は話せない」としたが、中国南部・欽州(広西チワン族自治区)ではメタノールからオレフィン、EVA(エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂)などの誘導品に至る一貫生産拠点を建設中だ。欽州市は南シナ海に面し、東南アジア向けの化学品輸出拠点としての成長が期待されている。同社も輸出を織り込んでいるとみられる。
中国でフッ素化学品最大手の一角を占める巨化集団(常州市)は、PTFE(四フッ化エチレン樹脂)やPVDF(ポリフッ化ビニリデン)などのフッ素系樹脂を出展。製品を通じた省エネ・低炭素への寄与を強調した。
同社も甘粛省で半導体用多結晶シリコンやフッ素化学品、クロルアルカリなどを包括する大型投資を実施する。現地の豊富な石炭資源を活用するとともに、再エネを活用した「緑色工場」としたい考え。
フッ素系樹脂は、耐薬品性などに優れるPFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、調理器具などのコーティング加工に多く使われるFEP(パーフルオロエチレンプロペンコ樹脂)といった高機能品も生産する計画。
プロジェクトの投資額は410億元(約8300億円)に上る。市場関係者は「生産品目をみると、AGCやダイキン、米ケマーズ、米3Mが手掛ける製品を網羅する『総合フッ素企業』を目指す姿勢だろう」と舌を巻く。
(「中国化学業界 緑色低碳に挑む/下」は6日付10面に掲載します)