手のひらサイズのシリコンウエハー上で100万種類のDNA合成が可能
<バイオものづくり>
DNA合成大手の米ツイストバイオサイエンスの日本法人(横浜市西区)は、日本のバイオものづくりの市場形成に貢献する。シリコンウエハー上でDNAをハイスループットで合成する独自技術を生かし、菌体の研究開発領域に供給する。米国では大手バイオファウンドリーのギンコ・バイオワークス(マサチューセッツ州)と提携するなどスタートアップとして知られた存在で、盛り上がりをみせる日本市場でも提案を強化する。
ツイストが合成に使う手のひらサイズのシリコンウエハーには、121個のミクロンサイズの微細な反応空間を持つクラスターが9600個あり、インクジェットプリンターを応用した技術により1度に100万種類のDNAを合成できる。これにより従来の同サイズの96ウェルプレートに比べ1万倍のアウトプットを実現する。
バイオものづくりの研究者は有用化合物を生産する微生物開発のため、DNAを設計して大腸菌などに導入し狙った代謝系を構築するかを評価する。菌体開発では、このDBTL(設計・開発・評価・学習)と呼ばれるサイクルを高速で回すことが成功のカギとされており、多様な塩基配列のDNA合成が求められている。提携先の米ギンコがDBTLを機械化、自動化により高速に行ううえで物理的な制約を取り払うことができたのも、ツイストの特許技術の力によるものだ。
野口氏
日本法人の野口匡則カントリーマネージャは「従来手法では難しかった長い配列のDNAも合成できる。また、高効率生産により従来方法と比べて使用資源の観点から環境負荷が低く、簡易包装にして廃棄物削減に取り組んでいる点も評価されている」と語る。製薬企業の抗体研究などの用途でも需要は大きいという。
日本のユーザーには受注から2、3営業日で米国西海岸から空輸しデリバリーできる。日本で本格的に事業展開を始めた2020年以降、企業との共同研究案件も増加しているが、市場全域での認知度は不十分な状況。バイオものづくりの市場形成機運が高まる中、「基礎研究領域を大事にしたい。アカデミアの1本、2本のDNA合成ニーズにも対応する。市場の隅々にまでブランド力を浸透させていく」(野口代表)として、きめ細かく事業を展開していく考え。
ツイストは13年設立。創薬、疾病研究分野の次世代シーケンス向けに、疾病につながる遺伝子変異が起こりやすい領域や、個別の遺伝子だけを評価できるターゲット試薬の販売も手がける。またデジタルデータをDNAに変換、保存する技術も有し、60分の映像ドラマのデータの保存、再生に成功。データ量が指数関数的に増加し保存に使用する冷却などのエネルギー問題などが指摘されるなかで、常温保存できるDNAは一つの解決策になり得るとして技術開発を進めている。