• 袖ケ浦工場。右側部分がコロイドの設備
      袖ケ浦工場。右側部分がコロイドの設備
     <注目製品解剖>

     日産化学の半導体向けのスペシャリティケミカルが、収益の柱に育っている。無機コロイドはウエハー研磨用途の需要が旺盛で、製造拠点の富山工場(富山県富山市)と袖ケ浦工場(千葉県袖ケ浦市)の稼働率が上昇。ユーザーの要請が強い増産には短期的に現有設備で対応し、中長期では設備投資を視野に入れる。一方、洗浄用途の高純度硫酸は新増設の設備が富山工場で完工し、供給を開始。ともに粒度制御や高純度化など高い技術力を強みとしており、主力のリソグラフィー用反射防止膜などに次ぐ牽引役になりつつある。

     半導体ウエハーの化学的機械研磨(CMP)に使われる研粒としての需要が高まっている無機コロイドは非晶質のシリカ粒子を原料とし、水熱合成した超微粒子が分散したコロイド溶液。従来は主に無機フィラーとしてアプリケーションへの硬度付与などを訴求し、脱硝装置のバインダーをはじめとする幅広い用途で展開してきた。

    • 八木社長
      八木社長
     CMP用途は2024年度半導体市場の復調に合わせて需要が増加。八木晋介社長は化学工業日報の取材に「ユーザーから早期の増産を要請されている」と切迫した状況を明かす。富山と袖ケ浦の両拠点では設備のボトルネック解消などにより増産対応を急ぐ方針だが、すぐにフル稼働に達する可能性がある。25年度以降も伸びを見込んでいるため「ユーザーの動向次第では設備投資も考えなければならない」状況だ。

     半導体ウエハー製造工程の洗浄用途に使われている高純度硫酸は、製品グレードとして最先端向けの超高純度から汎用まで幅広く対応できるが、こちらも需要が増加。すでに富山工場に25億円を投じた新規増強設備が今年1月に完工しており、反射防止膜のユーザーでもある半導体メーカーが国内に新設した拠点への供給も始まっている。

     無機コロイドを初めて事業化したのは1951年で、硫酸は創業以来の製品だ。どちらの製品も長い歴史の中で時間をかけて技術を磨いてきた。無機コロイドは精密な研磨を可能とする数ナノメートルオーダーの粒径制御が、高純度硫酸は異物管理の要求が高度化するなかでppt(1兆分の1)レベルの超高純度化技術がユーザーの望む高い品質要求をクリアする原動力となり、現在の差別化、採用増につながっている。

     24年度4~12月期の無機コロイド全体(有機溶媒に分散したゾルなどを含む)はCMP向けが牽引して前年同期比17%増収と想定以上に上振れ。高純度硫酸も25%の大幅増収を果たした。収益貢献の顕在化は半導体市場の復調要因も大きいが、その製品力なくしては実現しなかった。

     25年度から新中期経営計画が始まる。その大方針は「不採算品を見直し、成長領域に経営資源を振り向ける」(八木社長)というもので、事業や製品の仕分けが進められる見通しだ。半導体材料は食糧需要の増加を背景に同じく伸びを見込む農業化学品と並ぶ成長ドライバーに位置づけられる。

     これまでの半導体材料は世界トップシェアのリソグラフィー用反射防止膜が成長を牽引してきた。近年は極端紫外線(EUV)下層膜や後工程における次世代パッケージ技術向けの仮貼り剤を事業化するなど、最先端領域でも高い競争優位性を誇っている。そこに加わるキーマテリアルとしての地位を確立した無機コロイドや高純度硫酸も、成長の一翼を担う戦略品としての性格をますます強めることになりそうだ。
いいね
電子版無料トライアル

  • ランキング(デジタル社会)