SCGPは紙素材ベースの衛生用品パッケージを開発中
<プロパック・アジアから見る 包材トレンド/上>
合成樹脂の主要な用途の一つとして、東南アジア域内でも安定した成長を見せる包装材料分野。このうち、使い捨てを想定したいわゆるシングルユースを基本としてきた食品包材では、グローバルブランドを中心に、環境負荷の低減につながる素材選びや設計を実践する動きが広がりを見せている。このほどタイのバンコクで開かれた域内最大級の包装関連展示会「プロパック・アジア2025」では、紙素材の機能向上やリサイクルしやすいモノマテリアル(単一素材)パッケージに利用可能な素材を提案する企業が目立った。同展示会に参加した原料・包材メーカーの展示を基にトレンドを読み解く。
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容器包装業界にもリサイクルや脱炭素化といったニーズへの対応が広がるなか、植物由来の紙素材はプラスチック削減に直接的に寄与する素材として再び注目を集めている。同展示会の初日に開かれた「グローバル・パッケージング・フォーラム」に登壇したタイ包装設計協会(タイPDA)のバルナ・スダスナ会長は「かつてプラスチックだったものも、いままさにリサイクルが容易な紙素材に変わってきている。紙素材は軽くて強くて、(包材として)設計しやすい」と説明した。
なかでも、非食品分野では代替検討が進んでいる。タイ素材大手サイアムセメントグループ(SCG)傘下のSCGパッケージング(SCGP)は今回、日本の衛生用品大手から依頼を受け開発中の紙おむつ用の紙製軟包材を展示した。100%紙素材ながら、表面の印刷品質は良好。病院などで配布するサンプル製品用のパッケージとして利用されるという。
同社では、バリアフィルムをラミネートし一次包装に使用できるタイプも用意している。ただ、プラ素材から紙素材への転換には「研究開発から製造装置、物流まで変更する必要があり大きな投資となる」(SCGP担当者)ことがハードルとなる。
食品包装として紙素材を活用するためには、コーティングなどによる機能向上が必須だ。日本勢はこのニーズに焦点を当て、機能性素材を売り込んでいる。
三井化学は機能素材を紙向けにも横展開する
三井化学は、これまで主にプラスチック包材向けに展開してきたバリア素材を応用して紙包装の機能を高める提案を行った。ヒートシール剤などに用いるポリオレフィン水性ディスパージョン「ケミパール」は、紙コップの内面コーティングとして従来のポリエチレンより温室効果ガス排出量の低減につながる。接着剤用ポリウレタン「タケラック」はガスバリア性能を付与できる。
また、スチレンアクリル系水性エマルション「ボンロン」を撥水撥油コーティング用に紹介。有機フッ素化合物(PFAS)問題の影響で、ファストフードの紙包みなどの撥水撥油用に使用されてきたフッ素樹脂コーティングが敬遠されるようになったため、その代替を狙う。
クラレは、バイオマス原料由来で生分解性を有するガスバリア材「プランティック」を紙素材と複合利用することを提案。ともに生分解性を有することから、食品の品質を保持できる生分解性パッケージへの応用が可能だ。
牛乳など乳製品用の紙パック容器のアルミ層を樹脂素材に置き換えて二酸化炭素(CO2)排出量の低減をうたうのはスイスに本社を置くSIG。紙素材の比率を90%まで高め、欧州などで採用されている。
未上市の製品アイデアを披露し、潜在的な顧客から意見を集める試みを行ったのは三菱ケミカルグループ。バイオポリブチレンサクシネート(PBS)をベースにした生分解性樹脂コンパウンドに紙素材を掛け合わせる技術や、紙包みなどを撥水撥油コーティングに利用できる非樹脂系素材を展示した。紙包材の付加価値を高める技術として紹介し、事業化に役立つ声を開発にフィードバックする。
リサイクルの先進地域である欧州の規制動向も、紙包材の高度化を後押しする。EUは今年1月に公布した「包装および包装廃棄物規制(PPWR)」のなかで、紙・段ボールのリサイクル率を2030年までに85%へ引き上げる目標を定めた。残る15%を使って包材としての機能性を維持しなければならず、一層の技術向上が必要となっている。