<勝ち残り模索する中国CDMO/上>

     【上海=中村幸岳】中国CDMO(医薬品の開発・製造受託)企業が、上流のプロセス開発から川下の商業生産にいたる一貫型サービスと、AI(人工知能)の活用を両輪に業績を回復させている。追い風となっているのは、国内創薬バイオテック・スタートアップの成長や、欧州メガファーマなど主要顧客の「中国回帰」だ。各社は、積極的な設備投資でこうした顧客からの受注を拡大。バイオ製造領域でも米中摩擦が懸念されるなか、その回避へ海外拠点の設置・増強も加速する。

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     中国では今上期、国内バイオ創薬関連企業が海外製薬大手に対し、新薬などを導出する事例が大幅に増えた。例えばCRO大手の信諾維医薬科技(エヴォポイント、蘇州)は5月、アステラス製薬に対し、固形がん治療を対象とするADC(抗体薬物複合体)の海外における開発・商業化権利を供与。契約金は最大で13億ドルを超える。

     ほかにも創勝集団(トランシェンタ、蘇州)や石薬集団(CSPC、石家荘)、三生製薬(3SBio、瀋陽)が、がん領域などに関連するADCや抗体について、メガファーマなどと巨額のライセンス契約を結んだ。市場関係者によると今上期、中国バイオ企業のライセンスアウト件数は10件以上、契約総額は100億ドル以上と過去最高を記録した。

     中国CDMO各社は、このように活発な動きをみせる国内創薬ベンチャーからプロセス開発を受注し、またライセンス先のメガファーマからも治験業務などを受託。昨年は景気停滞や、米国のバイオセキュア法成立を懸念した外国顧客の「中国離れ」で受注が減少し、業績も軒並み悪化したCDMO業界だが、今年1~6月期は多くの企業が業績改善を果たした(表)。

     医薬品関連リサーチ・コンサルティングサービスを手掛ける米フロスト&サリバンによると、2018年から23年にかけて中国の医薬品CDMO市場規模は229億元から859億元に拡大。年率40%近い成長を遂げ、世界シェア15%を占めるまでになった。さらに28年までに2000億元を超えると予測、33年までに5369億元に達する。

     バイオセキュア法成立を見越し昨年、欧米製薬関連企業は欧州やインドで中国の代替となる委託先を探索したが、ニーズを満たせる委託先は少なかったようだ。有力CDMO企業は「メガファーマが求める品質とコスト、そしてスピードに応えられるのは現状中国企業をおいてほかにない」と口をそろえる。

     一方、中国CDMO業界では変化も生じている。例えば、新薬開発のアーリーステージから商業生産までの一貫サービスを謳う企業の増加が挙げられる。この背景にも、中国の創薬ベンチャーによる導出増加がある。比較的規模が小さいベンチャーは、CDMO企業に対してワンストップサービスを求める傾向が強い。

     また米国での事業ウエートを下げ、中国ビジネスを拡大するため、一貫サービスを売りにする方針を打ち出しているとの見方もある。これにより従来は市場で住み分けが可能だった企業間でも競合が生じ始めたようだ。

     もう一つのトレンドとしては、主にAPI(原薬・中間体)の製造時に使う結晶化(晶析)技術の開発が挙げられる。固体目的物を高純度で析出する同技術は今後さらに重要性が増すとされ、関連特許の申請が各国で増加。API開発・製造を受託する場合、「他社特許の回避が必要となるケースが増えることが想定される」(CDMO大手)ため、各社が独自技術の開発を加速させている。

     晶析技術を強みとする中国大手は、薬明康徳や凱莱英、九洲薬業、薬石科技など。このほかCRO大手の晶雲薬物(クリスタルファーマ、蘇州)も同技術に強みを持つ。
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